2017 Fiscal Year Annual Research Report
有機原料を用いた気相成長法による2次元層状MoS2薄膜の低温成膜に関する研究
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16J11377
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
石原 聖也 明治大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 二硫化モリブデン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、二次元層状半導体の一種である二硫化モリブデン(MoS2)のディスプレイ応用を目的として、有機金属気相成長法(MOCVD)による高品質MoS2薄膜低温作製手法の確立について研究を行っている。今年度は、まず昨年度に多条件同時成膜Hot-Wall型CVD装置によって選定したモリブデン、硫黄の両有機金属原料を用いたCold-Wall CVD成膜の実施、及び成膜条件の最適化を行いMOCVD-MoS2の膜厚制御をはかった。また、より大面積均一性に優れたMoS2薄膜作製環境の探索として成膜チャンバー内の原料ガスの吹き付け分布を解析し、装置設計を行い実際の成膜環境にフィードバックを行った。 成膜条件の最適化として、成膜時のモリブデン及び硫黄原料分圧に着目し調査した結果、モリブデンに対し硫黄を300倍の量で供給すると膜厚制御性が向上することが解明された。また、成膜環境の最適化としてCVD特有の原料の吹き付け分布を制御するため、原料のプロセスチャンバー導入に3元系同軸導入管を用いた。原料の吹き付け分布の制御は、各原料を輸送するキャリアガスとH2ガスの流量を調整することで行う。導入管外側のガスの流量を内側のガスの流量に対して増やした場合ガスは直線的に試料まで向かい、逆に導入管内側のガスの流量を外側のガスの流量に対して増やした場合は広がりながら試料まで向かう。このように、大面積基板上への均一なガス吹き付け分布達成に必要なガス流量比を探索することで3 cm角SiO2/Si基板上への均一成膜を実現した。 これらの成果は、2017 Materials Research Society Fall Meetingにおいて報告し、MRS Advancesに投稿、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2次元層状MoS2のディスプレイ応用を目的として、MOCVDによる高品質MoS2薄膜低温作製手法の確立について研究を行っており、その中で新規モリブデン及び硫黄有機原料の使用に着目することで、250°Cでの単層MoS2低温成長を達成し、薄膜作製プロセス温度の大幅な低減に成功している。また本研究員は、有機原料の分解反応過程についてもシミュレーション技術を用いて明らかにしており、MoS2成膜分野において学術的にも貢献していると考える。加えて、本研究員は世界的にも新規性の高いCold-wall MOCVD装置を用いたMoS2成膜を実施した。その際に原料噴射口の形状を改善することでガスの吹き付け分布を均一化し、これまで困難であったcmスケール基板上へのMoS2成膜を達成した。これは期待以上の研究の進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は更に高品質・大面積均一性に優れたMoS2成膜・評価、およびデバイス化への検討を行う。 まず第一に、Cold-Wall型CVD装置により成膜した高品質MoS2の膜質・均一性を、2000 mmの焦点距離を有し高いスペクトル分解能(0.1 cm-1)を誇る当研究室所有のラマン分光器により精密マッピング測定する。その際、ラマン分光測定により得られたMoS2起因のラマンスペクトルに対し、量子効果モデルを考慮したシミュレーション関数を当てはめることで、MoS2薄膜の粒径、残留応力、熱伝導率を精密評価する。量子効果シミュレーション関数の構築に必要な各種パラメータをBulk MoS2測定により決定する。 次に、得られた高品質MoS2薄膜の透過率、発光特性について分光エリプソメトリーにより評価する。その際に、Tauc plot法を用いたMoS2バンドギャップ評価技術について検討し、これを確立する。
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