2016 Fiscal Year Annual Research Report
高効率可視光水分解を目指した新規層状化合物光触媒の開発
Project/Area Number |
16J11397
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 肇 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水分解 / Z-スキーム / 層状化合物 / 窒素ドープ / タングステン酸 / 可視光利用 / 不均一系触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
層状金属酸化物は紫外光照射下では非常に高い活性を示すものが多くあるが、バンドギャップが大きく紫外光しか吸収できないため、実用化に必要不可欠である可視光を利用できない。本研究ではそのような層状金属酸化物への窒素ドープによる可視光応答化と、可視光吸収を有する新規層状化合物光触媒の開発に取り組んだ。以下に詳細を記す。 タンタル系の層状ペロブスカイトへの窒素ドープにより、可視光吸収を有する層状化合物光触媒の調製に成功した。得られた窒素ドープ層状金属酸化物を可逆な還元剤であるI-を含む水溶液からの水素生成反応に用いると、窒素ドープ酸化チタンや窒素ドープ酸化タンタルは全く活性を示さない一方、窒素ドープ層状金属酸化物は明確な可視光水素生成が見られた。このように窒素ドープ材料で可逆なレドックスを用いた水素生成が実現した例はこれまで無く、二段階水分解用光触媒としての層状金属酸化物の有用性が示された。この成果は学術雑誌Journal of Materials Chemistry Aに掲載された。 タングステン酸H2WO4はおよそ500 nmまでの可視光吸収を有する魅力的な材料であるにも関わらず、これまで水分解用光触媒としては全く注目されてこなかった。そこで鉄レドックス(Fe3+/Fe2+)を用いた二段階水分解系へ適用したところ、非常に高効率かつ安定な酸素生成用光触媒として機能することを見出した。さらに、このタングステン酸は、高効率な酸素生成用光触媒として良く知られている酸化タングステンWO3よりも長波長の光を酸素生成に利用できることがわかった。また、このH2WO4の長波長吸収の理由をDFT計算によって明らかにした。この成果をまとめて、学術雑誌Journal of Materials Chemistry Aに提出している。 またこれらの成果を国外5件、国内3件の学会で報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に書いた研究実施計画では層状金属酸化物へのアニオン交換による可視光応答化と新規可視光応答型光触媒の開発に取り組むことを述べた。アニオン交換では、硫黄アニオン(S2-)のドープは置換エネルギーが大きいためか、S2-がドープされないもしくは層状金属酸化物の層構造が壊れるかのいずれかであった。一方、窒素アニオン(N3-)のドープには成功し、可視光応答性を有する水素生成用光触媒を合成することができた。新規可視光応答型光触媒の開発に関しては、H2WO4だけでなく様々なタングステン酸を可視光二段階励起型水分解系に適応できることを見出した。さらにこれらタングステン酸のバンド計算から、構造を変化させることで光吸収を長波長化できる可能性を見出している。チタン系層状金属酸化物へのカチオン交換にも取り組んでおり、可視光吸収を有する材料ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
窒素ドープによる層状金属酸化物への可視光応答化に関しては、今回タンタル系層状ペロブスカイトへの窒素ドープで得られた知見を基にして、チタン系やニオブ系、チタンニオブ系などの層状金属酸化物材料への応用を検討していく。チタンやニオブを含む材料への窒素ドープでは、試料が強い還元雰囲気にさらされることから、これら金属カチオンが還元されやすい。これによって生じる還元種は一般的に光励起によって生成した電荷の再結合中心となって活性が低下するといわれている。一方、我々は窒素ドープの際に適切なフラックスを添加しておくことで、この還元が抑制されることを見出しており、これを適用することで高活性な窒素ドープ材料の調製に取り組む。 これまでの研究でタングステン酸H2WO4が酸素生成能を有することを初めて見出したが、このタングステン酸はH2W2O7やH0.66WO3.33など、様々な組成のものが存在する。これらタングステン酸も酸素生成可能であることを見出しており、今後はこれらタングステン酸の光吸収とバンド構造の関係性についてより詳細に検討していく。さらい、これらタングステン酸の中には層剥離によってナノシートを調製できるものも存在し、それらナノシートを用いた水分解系の構築にも取り組む。
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Research Products
(5 results)