2017 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系におけるKIAA1199の役割に関する研究
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16J11526
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
吉野 雄太 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸 / KIAA1199 / HYBID / 海馬 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬はヒアルロン酸が豊富な脳部位の一つであり、記憶学習など高次脳機能において重要である。これまでの研究から、ヒアルロン酸脱重合関連因子であるKIAA1199を欠損させたマウスの海馬において、野生型マウスと比較して高分子量ヒアルロン酸が多量に存在していることが明らかとなっている。KIAA1199欠損マウスは物体認知記憶および空間認識記憶の低下を起こすため、海馬ヒアルロン酸蓄積と認知機能低下との関連が示唆されている (Yoshino et al., Neuroscience, 2017)。脳におけるヒアルロン酸の詳細な分布と役割に関しては不明な点が多いため、KIAA1199欠損マウスの脳においてどのようにヒアルロン酸が蓄積するのかを検討した。ヒアルロン酸を特異的に染色するビオチン化ヒアルロン酸結合タンパク質を用いて染色を行ったところ、KIAA1199欠損マウス海馬の特定の領域 (CA1領域放射状層、歯状回門) に顕著な蓄積が認められた。一方で、その他の脳部位においては明らかな変化はなかった。特に歯状回領域においてはKiaa1199 mRNAが多く発現することから、KIAA1199が海馬歯状回のヒアルロン酸代謝のキーレギュレーターであることが強く示唆された。今後は、海馬歯状回が担うとされる成体期神経新生の過程や、記憶学習に必要な神経のシナプス形成能の評価を行い、KIAA1199の役割をさらに詳細に検討していく予定である。 近年、神経変性疾患や老化病態の一部において脳のヒアルロン酸が蓄積すると報告されていることから脳におけるヒアルロン酸代謝の担う役割は興味深い分野である。本研究による脳におけるヒアルロン酸代謝に関わる因子とそのメカニズムの理解は認知機能を含む高次脳機能障害に対する新たな創薬標的の提案につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、KIAA1199欠損マウスにおける海馬の形態学的変化を検討した。ヒアルロン酸結合タンパク質を用いた組織染色の結果、KIAA1199欠損マウスの海馬におけるヒアルロン酸の蓄積が示された。また、ヒアルロン酸蓄積が生じた部位はKiaa1199 mRNAが特に発現している部位であった。免疫染色法により、KIAA1199欠損マウス海馬において樹状突起の構造異常が観察された。これらの結果はKIAA1199欠損マウスにおいて観察された記憶障害の一因とも考えられ、高次脳機能におけるヒアルロン酸代謝の重要性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はKIAA1199欠損マウスがなぜ記憶障害を起こすのか、海馬におけるヒアルロン酸過剰蓄積が認知機能や神経形態に与える影響は何か、について生化学的検討により明らかにする予定である。KIAA1199欠損マウスにおいてシナプス形成能に変化がある可能性が考えられるため、KIAA1199欠損マウスの海馬を用いてGolgi-Cox染色を行い、樹状突起スパインの密度や形態を検討する。また、シナプス可塑性に関与するとされる、各種グルタミン酸受容体の発現量、局在に関して検討を行う。初代培養神経の培養を行い、KIAA1199遺伝子の有無や高分子量ヒアルロン酸の有無が神経の増殖能や分化能に与える影響を調べる。
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Research Products
(2 results)