2017 Fiscal Year Annual Research Report
円偏光発光の色調を連続的に制御できるマルチスイッチ型の分子システムの構築
Project/Area Number |
16J11554
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今井 祐輝 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 円偏光発光 / 金属イオン / 超分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では円偏光発光の色調を連続的に制御できるマルチスイッチ型の分子システムの構築を行っている。その目的は、当研究グループが開発した「金属イオンとの配位結合に伴う芳香族分子間距離の制御」を利用した発光波長を自在に変化できる分子技術の基盤を創出することであり、そのために以下に示す研究項目に関して研究を進めている。 1.金属イオンとの相互作用を用いたπ-π相互作用の制御によって分子間の距離を自在に制御し、発光色調をコントロールできるマルチスイッチ型分子システムの構築。2.不斉置換基の導入によるマルチスイッチ型のシステムに基づく色調可変型の円偏光発光材料の創出。 具体的な項目としては、下記の研究計画に従う。1.キラリティーを有する配位子の設計および合成。2.金属イオンと配位子からなる錯体の光学特性の評価。3.金属イオンからなる錯体の構造同定および円偏光発光特性の評価。 今年度前期は「1.キラリティーを有する配位子の設計および合成」そして「2.金属イオンと配位子からなる錯体の光学特性の評価」について重点的に研究を行い、錯体構造と発光特性との関係について調べた。また、得られた錯体に対して補助配位子を加えることで、CDシグナルの強度を増強させることに成功した。また、後期は「3.金属イオンからなる錯体の構造同定および円偏光発光特性の評価」について検討を行うことで、金属イオンを添加した際に誘起されるキラル光学特性について調べた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は「1.キラリティーを有する配位子の設計および合成」そして「2.金属イオンと配位子からなる錯体の光学特性の評価」について重点的に研究を行った。具体的には、ベンゼンの1,3,5位に三重結合を介してキラリティーを有するイミダゾールを導入したC3対称型配位子を合成し、亜鉛イオンとの錯体形成に伴う分光学的特性について評価を行った。その結果、C3対称型配位子は亜鉛イオンと4:3の量論で錯体を形成し、亜鉛イオンの配位数が3であるL4M3錯体を形成することが分かった。一方で、円二色性(CD)スペクトルの滴定実験からC3対称型配位子は亜鉛イオンとの錯体形成に伴い超分子キラリティーが発現することを明らかにした。また、このL4M3錯体に対して補助配位子としてイミダゾールを添加すると、L4M3錯体に由来するCDシグナルの増強が観測された。このCDシグナルの増強はL4M3錯体中の亜鉛イオンがもつ空配位座に対してイミダゾールが配位するためであると考えられる。後期は「3.金属イオンからなる錯体の構造同定および円偏光発光特性の評価」について検討を行った。具体的には、これまでに合成した架橋型ピレン誘導体の円偏光発光スペクトルを測定した。その結果、架橋型ピレン誘導体は配位子単体では円偏光発光を示さないのに対して、亜鉛イオンを添加すると、ピレンの会合体に由来する発光体に強い円偏光発光が観測された。この発光における円偏光発光特性を非対称性因子 (2(IL-IR)/(IL+IR)、IL: 左回り円偏光強度、IR: 左回り円偏光強度) をもちいて評価すると、0.02となり、有機円偏光発光材料としては比較的大きな円偏光発光特性を示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き戦略2の「金属イオンと配位子からなる錯体の光学特性の評価」および戦略3の「金属イオンからなる錯体の構造同定および円偏光発光特性の評価」を重点的に行う。これまでに調製した錯体の分光学的特性を吸収・発光スペクトルから評価する。具体的には、平面性分子を含む溶液に亜鉛イオンを徐々に加えていき、スペクトル変化から亜鉛イオンと平面性分子からなる錯体の組織構造について考察する。また、錯体形成に伴って誘起されるキラル光学特性については円二色性スペクトル・円偏光発光スペクトルを測定することで評価する。本研究では、サイドアームであるイミダゾール部位に配位する亜鉛イオンの数の増大に応じて、発光波長及び非対称性因子がどの様に変化するのかを調べる。具体的には、配位子濃度を一定にし、亜鉛イオンを添加することで非対称性因子の滴定実験を行う。また、錯体構造についてはESI-MSおよび単結晶X線構造解析から評価し、以上の測定結果から平面性分子と亜鉛イオンとの組織構造および円偏光発光特性との相関を明らかにしていく。 また、C3対称型配位子と亜鉛イオンとのL4M3錯体の構造およびL4M3錯体にイミダゾールを添加した構造について構造の同定を行うとともに、これまでに得られた知見を基に、高い円偏光発光特性をもつ色調可変型の円偏光発光材料を創出する。
|