2016 Fiscal Year Annual Research Report
奇パリティ多極子におけるエキゾチックな量子現象の解明
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16J11558
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
人見 尚典 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 奇パリティ電気多極子 / 電気八極子 / 反対称スピン軌道相互作用 / 磁気電気応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、奇パリティ電気多極子秩序相における熱力学的安定性と磁気電気応答に関する研究を行った。以下に研究実績をまとめる。 1、電気八極子秩序相の熱力学的安定性に対する反対称スピン軌道相互作用の効果を調べて、その成果を論文として発表した。この論文では、反対称スピン軌道相互作用を考慮することで電気八極子状態が安定化されることを示している。また、運動量空間におけるスピン構造が電気八極子の対称性に由来していることを明らかにした。この結果は奇パリティ多極子秩序相における非自明な磁気電気応答の可能性を示しており、本研究で示した電気八極子秩序相における磁場中での非対称なバンド構造にもその可能性が示唆されている。 2、奇パリティ多極子秩序相における磁気電気応答を明らかにするために、電気八極子秩序相における磁気電気効果・内因性スピンホール効果を調べた。その結果、従来明らかにされているRashba系における磁気電気効果とは異なり、この電気八極子状態特有の磁気電気効果が現れることを示した。また、内因性スピンホール効果を調べることで、通常状態と比較して電気八極子状態ではスピンホール伝導率が増大すること、相境界においてスピンホール伝導率に飛びが現れることを示した。さらに、このスピンホール伝導率の増大は電気八極子状態特有のバンド分裂に起因していることを明らかにした。 3、二層系銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7-x(YBCO)における擬ギャップ相の正体が電気八極子状態である可能性を示した。具体的には、最近YBCOにおいて行われた磁気トルク実験の測定結果を理論的に再現した。さらに電気八極子秩序相において磁気感受率が減少する振る舞いを示した。この振る舞いは、NMR測定により観測されている擬ギャップ相での振る舞いと一致している。2と3をまとめた研究成果を日本物理学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の研究計画である奇パリティ多極子秩序相における新奇量子現象の探索を行い、電気八極子状態に特有の磁気電気応答を明らかにすることができた。さらに、二層系銅酸化物高温超伝導体における擬ギャップ相の正体が電気八極子状態である可能性を示すことができた。これらの研究成果を学会・研究会で発表した。以上から、本研究はおおむね順当に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究において、電気八極子状態に特有の磁気電気応答が明らかになった。次に、非磁性不純物の存在下での電気八極子秩序相における内因性スピンホール効果・磁気電気効果に対するバーテックス補正の効果を調べることが研究課題となる。また、本研究課題の一つである、強相関電子系における奇パリティ多極子状態と共存する新奇超伝導状態の探索にも取り組む。
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Research Products
(4 results)