2016 Fiscal Year Annual Research Report
動物個体における大量分泌タンパク質の小胞体選別機構の解明
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16J11698
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
三枝 慶子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | C.elegans / lipoprotein / ER / cargo receptor / membrane traffic / ApoB |
Outline of Annual Research Achievements |
1、腸細胞における SFT-4 の局在 C. elegans において GFP-SFT-4 を発現させると,腸細胞において小胞体膜マーカータンパク質と共局在を示すことが判明した.また GFP-SFT-4 は一部ドット状の構造体を形成しており,これらは COPII コートタンパク質である SEC-23 と共局在を示した.以上の結果から,SFT-4 は腸細胞において小胞体上のCOPII 小胞形成サイト(ERES) に豊富に局在することが示唆された. 2、SFT-4 の基質特異性の検証 SFT-4 を阻害すると VIT-2 を含む複数の可溶性分泌タンパク質の輸送が阻害されたが,膜タンパク質への影響は軽微であった.そこで可溶性分泌タンパク質のモニタータンパク質として ssGFP を利用して解析した.その結果,ssGFP もまた SFT-4 を阻害すると細胞内に蓄積することが判明した.しかし SFT-4とVIT-2 は生体内で結合したが ssGFPとの間には相互作用が認められなかったことから,VIT-2のような大量分泌タンパク質が小胞体に貯留した結果,二次的影響として ssGFP の分泌が停滞している可能性が考えられた. 3、培養細胞を用いた哺乳類 Surf4 の解析 哺乳類ホモログ Surf4 についてリポタンパク質の分泌に着目して解析を行った結果,ヒト肝臓細胞 HepG2 において Surf4 を阻害すると VLDL のコアタンパク質 ApoB が小胞体に蓄積し,細胞外への分泌が有意に減少することが判明した.この結果から,ヒトにおいても Surf4 が ApoB をCOPII 小胞へ効率的に濃縮する積み荷受容体として働く可能性が考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,動物における多種多様な分泌タンパク質を特異的かつ効率的に輸送小胞へ選別する制御機構を明らかにするため,線虫 C. elegans を用いた解析を行った.C. elegans が腸細胞から大量に分泌する VIT-2 というリポタンパク質に着目し,VIT-2 の分泌に関与する因子を探索した結果,SFT-4(哺乳類 Surf4)という積み荷受容体ホモログが,VIT-2 の小胞体からの輸送に関与することを見出した.そこで,この SFT-4 が VIT-2 を含む大量分泌タンパク質の小胞体からの輸送において果たす役割に着目して解析を進めた. 現在,以下の研究成果を上げている.まず VIT-2 の細胞内輸送に働く候補因子として同定した SFT-4 の基本的解析を進め,この因子が小胞体の輸出部位に局在化し,VIT-2 等の可溶性タンパク質の輸送に関与していることを明らかにした.また,共免疫沈降実験により SFT-4 と VIT-2 が相互作用することを示した.これらの結果から,SFT-4 が今まで未同定であったリポタンパク質に対する積み荷受容体であることが示唆された.一方,ヒトの肝蔵由来の培養細胞において SFT-4 のホモログである Surf4 を発現抑制すると,リポタンパク質の分泌が阻害されることを見出した.これらの結果は,SFT-4/Surf4 がリポタンパク質の分泌において普遍的に働く可能性を示唆している.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果により,C. elegans の SFT-4 が脂質輸送を担うリポタンパク質に対する積み荷受容体であることが示唆されている.また,ヒトの肝蔵由来の培養細胞においても,SFT-4 のホモログである Surf4 を発現抑制するとリポタンパク質の分泌が阻害されることを見出している.そこで今後,まず哺乳類の Surf4 に着目し,培養細胞において Surf4 を阻害した際のリポタンパク質の細胞内蓄積について,小胞体からの輸送が阻害されているのか,蓄積部位を詳細に解析する.また Surf4 とリポタンパク質との相互作用について解析を進め,重要と想定される配列の変異体を構築し,分泌能との相関について検証する. さらに C. elegans の SFT-4 について,腸細胞において SFT-4 を欠損させると生じる脂質様構造体に着目し,腸細胞で高発現する遺伝子を対象に RNAi を行い,VIT-2-GFP 蓄積の抑制を指標として関連因子を探索する.候補因子が得られた場合,細胞内局在や SFT-4 との機能関連性を解析し,小胞体からの脂質輸送に関する機能を明らかにする.
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