2016 Fiscal Year Annual Research Report
動物個体におけるRab35の多彩な生理機能とその制御機構の解明
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16J11714
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
前島 郁子 群馬大学, 生体調節研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | メンブレントラフィック / Rab35 / 胚発生 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
Rab ファミリータンパク質は, オルガネラ間を行き来する輸送小胞の出芽・移動・融合を制御する中心的因子として, 個々の細胞機能のみならず生体の高次機能調節にも重要な役割を果たしている。Rab35は、線虫における卵黄受容体 (LDL受容体)のリサイクリング経路の選択的輸送制御因子として同定された。それに加えて、細胞分裂、アクチン重合、神経発生、神経突起伸長、エクソソーム分泌や免疫シナプス形成など様々な機能をもつ多機能因子であることが報告されている。また、その機能不全はコレステロール代謝、神経変性疾患及び癌に関与することが示唆されており、哺乳動物個体における生理機能の解明は生物学的・医学的に重要な知見を提供するものと期待される。そこで、本研究課題では、Rab35 欠損マウスを作製し, Rab35による多様な細胞機能の制御機構及び哺乳動物個体における生理機能の解明を目指す。 本年度は、全身性Rab35欠損マウスの胚発生を詳細に解析し、Rab35ホモ欠損胚は発生初期において形態異常を示すことを見出し、Rab35が哺乳動物の発生に必須の因子であることを明らかにすることができた。また、Cre-loxPシステムにより神経系特異的Rab35欠損マウス (Rab35flox/flox;Nestin-Cre)および肝細胞特異的Rab35欠損マウス (Rab35flox/flox;Albmin-Cre)を作製した。出生直後のこれら両組織特異的Rab35欠損マウスでは、脳もしくは肝臓形態に明らかな異常は見当たらなかった。現在、Rab35欠損が組織形態と機能に与える影響についての解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全身性Rab35欠損マウスが致死となる時期を同定し、発生初期に形態異常を示す知見を得られたことで、線虫とは異なり、Rab35が哺乳動物の発生に必須の因子であることを明らかにすることができた。また、Rab35 floxマウスと組織特異的Creマウスとの交配も順調に進展した。神経系特異的Rab35欠損マウスでは予想外の知見が得られたことから、今後表現型の解析を詳細に行うことで哺乳動物個体におけるRab35の真の生理的役割を明らかにできるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究によって、神経突起伸長への影響が予想された神経系特異的Rab35欠損マウスにおいて、脳形態に大きな異常は見当たらないという予想外の知見が得られた。今後は形態をより詳細に解析するとともに脳機能への影響を行動解析によって明らかにしたい。また、肝細胞特異的Rab35欠損マウスにおいては通常餌による飼育に加え、高脂肪給餌によって肝機能に負荷をかけた場合の影響についても解析を行う予定である。
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