2016 Fiscal Year Annual Research Report
バイオ分析・医薬品開発への応用を指向した新規チオフラビンT誘導体の創製
Project/Area Number |
16J11775
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
片岡 由佳 群馬大学, 大学院理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | チオフラビンT / 誘導体 / 蛍光プローブ / 核酸 / グアニン四重鎖構造 / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
チオフラビンT(ThT)はアミロイドタンパク質の蛍光イメージングなどに長年使用されてきたが、蛍光強度に起因する化学構造近傍のN3位はほとんど着目されてなかった。本研究ではN3位置換ThT誘導体の新規創製に取り組んでいる。まず、遺伝子発現制御薬の開発としてN3位に置換基または種々のリンカーを導入したThT誘導体の合成した。標的のグアニン四重鎖(G4)に対する特性を評価したところ、アミノ基を導入した誘導体は特定のパラレル型G4に対して非常に高い選択性を示し、アミノ基の導入がThT誘導体の蛍光・結合特性に大きな影響を与えることを明らかにした。一方、長いエチレンオキシドリンカーを導入した誘導体はパラレル型G4への選択性を示したが、核酸との静電相互作用が期待されるスペルミンを導入した誘導体はG4選択性が低下した。従って、適当なリンカーの末端に、標的に結合するリガンドをコンジュゲート化することで標的対象の拡張が可能であることが示唆された。 そこで、エチレンオキシドリンカーを介してd-デスチオビオチンを導入したThT誘導体を設計・合成した。標的のストレプトアビジンに対する特性を評価し、ビオチンとの交換反応も検証した。結果、標的の濃度に応じて蛍光強度が変化し、その蛍光滴定曲線は両者ともシグモイド曲線にフィットすることが分かった。従って、ストレプトアビジンだけでなくビオチンも定量できることを実証した。次に、ストークスシフトの拡張を指向してローダミンまたはフルオレセインを導入したThT誘導体を創製し、G4に対する特性評価を行った。結果、誘導体分子内で蛍光共鳴エネルギー移動は起こらず、ストークスシフトは拡張しなかった。また、ThTは蛍光基の導入によってG4選択性や蛍光特性が変化することを明らかにした。今後、化学構造の試行錯誤を要するが、N3位置換によるストークスシフト拡張の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標のとおり、遺伝子発現制御薬の開発を目的としたThT誘導体を新たに合成し、分光学的手法によりそれらの機能評価を行うことができた。また、その結果をふまえて標的対象やストークスシフトの拡張を指向した蛍光プローブの開発を目標として、ThT誘導体を創製し、その機能評価を行うことができた。さらに、これらの結果から概ね誘導体の設計指針を立てることができたことなどが理由として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光プローブの開発では、今年度の機能評価の結果にもとづいて、リンカー長など化学構造を最適化させた改良型ThT誘導体の設計および合成を行う。また、創製したThT誘導体の機能評価を行う。 遺伝子発現制御薬の開発では、グアニン四重鎖のトポロジーに対する選択性向上を狙って化学構造の最適化による改良型ThT誘導体を設計・合成し、分光学的手法を用いて機能評価を行う。さらに、今年度創製した化合物とあわせてG4 構造誘起の評価 (CD スペクトル測定など)およびin vitroにおける有効性の検証(PCR-stop assay法やリアルタイムRT-PCR 法など)を行う。ここで有効性を示せた化合物についてはin vivo における発現制御の検証(キセノグラフト法など)を行う予定である。さらに、この結果にもとづいて化学構造の最適化による改良型ThT誘導体の設計および合成を行う予定である。
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