2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Descriptive Study of the Verbs Express Stative, Existence, Single-feature Concept and Relation
Project/Area Number |
16J30004
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
呉 揚 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | 状態動詞 / 特性動詞 / オノマトペ / ムード・テンス・アスペクト体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、特性・状態を表す動詞を中心に考察した。特性動詞に関しては、まず、特性動詞に該当する語彙について、小説から目視によって収集するとともに、国立国語研究所編(2004)『分類語彙表 増補改訂版』にも目を通して語彙を補い、可能な限り網羅的な単語リスト(63語)を作った。次に、すべての語彙に対して、各コーパスを対象とした大規模な用例調査(18000例ほど)を行い、語彙、文法、テクストなどの情報を付与したデータベースを作成した。データベースに基づいて、特性動詞のアスペクト・テンス形式について、終止用法と連体用法における使用実態や、終止用法におけるシテイル形式とスル形式の使い分け、連体用法におけるシタ形式とシテイル形式の使い分けに注目して、詳細な検討をした。考察結果は、『岡山大学社会文化科学研究科紀要』第42号(2016年11月)に公表した。 状態動詞に関しては、まず、まだ定説のない「状態」の概念について再検討した。金田一春彦、寺村秀夫、奥田靖雄、仁田義雄を代表とする研究者の立場を概観したうえで、それぞれの見解を詳しく紹介し比較しながら、自ら考えている「状態」の概念を提示した。この成果は、『岡山大学社会文化科学研究科紀要』第43号(2017年3月)に公表した。 次に、提示した「状態」の概念を基に、感情・感覚・知覚を表す動詞を状態動詞のプロトタイプとして認定し、これらの動詞のアスペクト・テンス対立について、ムードとの関わりの観点から体系的で包括的に記述した。 このほか、日本語のオノマトペ動詞の語彙・文法的性質について、意味的なタイプ、述語形式の用いられ方、文の中での機能、アスペクト・テンス形式の特徴などの面から、一般日本語動詞と比較しながら、明らかにした。調査結果は、国立国語研究所が主催した国際シンポジウムでポスター発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、1年度面の研究計画は、「状態」と「特性」を表す動詞のデータベースを構築して、それらのムード・テンス・アスペクト体系の考察することであるが、この2つのテーマを完成して、考察結果を公表しただけでなく、「状態」と「特性」を表す形容詞を視野に入れて、動詞との相互関係について検討を加えた。 また、「状態」と「特性」を表す動詞の考察を進めている中、当初視野に入れていなかったオノマトペが「状態」「特性」の意味領域に多く入り込んでいることを発見して、オノマトペ動詞の意味・文法的な体系にも考察を加えて、考察結果を公表した。 このように、昨年度は研究の広がりと深まりが見られたということから、計画以上の進展があったといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、必要に応じてデータベースの拡充・修正を行いながら、前年度のタイプごとの記述を改善する。 次に、「存在」を表す動詞と「関係」を表す動詞に対する考察を行う。「存在」を表す動詞は、時間的限定性のあるもの(一時的・長期的存在)と時間的限定のないもの(恒常的存在)がある。両者を分ける文法的な条件を探し、データベースを駆使しながら、前年度の研究において培った方法も活用して、時間的限定性の有無の違いにもとづく、そのATM体系について考察する。「関係」を表す動詞は、スル形式とシテイル形式のいずれでも使え、違いがない(共通する=共通している)と言われているが、だとすれば、なぜ2つの形式の存在が必要なのか、両者を使い分ける条件は何かということを、データベースにもとづき、テクストなどの外的要因にも手がかりを求めながら、考察する。最後に、以上を踏まえて、述語の意味的なタイプにおける「関係」の位置づけを再検討する。 それらが完了したら、主体の意味的な特徴、構文論的な条件や語メタファー・メトニミーなどの認知言語学的な観点、語彙的な意味の体系性やテクストタイプとの関係の観点から、「状態」「存在」「特性」「関係」を表す動詞の各タイプの間の相互関係や他の品詞との関係などを見据えた、総合的な考察を行う。
|