2016 Fiscal Year Annual Research Report
モデル植物の自然変異を用いた病害虫群集のゲノムワイドな理解と予測
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16J30005
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
佐藤 安弘 龍谷大学, 研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 生態学 / 動植物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、ゲノムが既知のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の野生系統を野外に移植して、遺伝子発現と植食者数のデータを網羅的に取得する。これにより、植物の遺伝的変異が、遺伝子の発現を介して、どのように植食者の群集の形成に寄与するかを明らかにする。 初年度は、滋賀県大津市とスイスチューリッヒ市の野外圃場で、シロイヌナズナ19系統による予備的な移植実験を行い、調査地での植食者相を特定した。この実験では、トライコーム(植物表面の細毛)がある遺伝子型上でハバチやノミハムシの数が減少すること、植物上の昆虫の種数に遺伝子型間で有意なばらつき(すなわち遺伝率)が存在することが示された。しかも、トライコーム変異体と野生型の間ですら植食者の数に有意な差がみられたことから、少数の遺伝子が防御に寄与していることも明らかとなった。2016年に行った野外実験の結果を、第64回日本生態学会東京大会で発表するとともに、英語論文として投稿を準備している。来年度への準備として、2016年度のうちに、ストックセンターからシロイヌナズナ野生系統の種子を取り寄せ、室内で栽培して本実験用の種子を増やした。当初の予定通り、2017年度には、日本とスイスで野外に約200系統移植する予定である。 また、受入研究室の協力の下、上記の野外実験で取得した植物サンプルのトランスクリプトーム解析を進めている。初年度のうちにRNA抽出の条件検討と約200サンプルのRNA-seqを進めた。次年度はこれらのデータ解析を進めつつ、本実験として更に多検体のサンプルを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、3年計画の1年目として、植物約200個体を用いた予備的な野外実験を日本とスイスで行った。予想より多くの昆虫が発生することが明らかとなり、日本・スイスともに定量的なデータを得ることができた。成果を学会で発表するとともに、原著論文の執筆をほぼ終えて投稿を準備している。来年度に向けても、本実験用の植物種子の取得を完了し、年度始めより野外実験にとりかかる準備が整っている。室内実験についても、来シーズンを前に条件検討を開始することができた。また、工学系の研究者と連携し、元の計画になかった新しいアプローチの検討も始めている。したがって、期待以上の研究の進展があったと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度への準備として、2016年度のうちに、ストックセンターからシロイヌナズナ野生系統の種子を取り寄せ、室内で栽培して本実験用の種子を増やした。2017年3月現在でシロイヌナズナ200系統の種子が利用可能となった。当初の予定通り、2017年度には、日本とスイスで野外に200系統8反復(=計1600個体)のシロイヌナズナを移植して、各植物個体上につく昆虫種を計測する。
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