2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J30010
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 美穂 北海道大学, 低温科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 系統分類 / 胞子形成 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では胞子形成細菌の多様性を明らかにし、その進化過程の解明および分類体系の確立を目的とする。 1)胞子形成性硫酸還元菌系統Desulfotomaculum属の系統的整理:細菌の中で最も大きな系統のひとつであるFirmicutes門は、多様な性質をもつ細菌を含む分類群である。ここに含まれるDesulfotomaculum属は硫酸還元を行うことのできる細菌のグループであり、現在33種が属する。本属は系統的多様性が非常に高く、33種が系統樹上で5つの異なるグループに分割された上に他の5属10種と混在していることが以前より指摘されていた。本研究ではDesulfotomaculum属細菌群を含む43種の細菌についてその系統学的な関係性をゲノム情報などを用いて精査した。その結果、本属の5グループはそれぞれ別の属とされるべきことが示された。本属の基準株を含んでいるグループのみをDesulfotomaculum属として、それ以外の4グループに対応する新属を設ける旨の再分類提唱を現在試みている。 2)通性嫌気性胞子形成性細菌Effusibacillus lacus skLN1株のゲノム解析:Effusibacillus属はFirmicutes門Bacilli綱の一分類群である。本属の基準株であるEffusibacillus lacus skLN1株の全ゲノム解析を行った。skLN1株はおよそ3.9 Mbpのゲノムサイズを有し、そのGC含量は50%程度であった。培養法にもとづく研究ではこの細菌が異化的に硝酸を亜硝酸に還元することがわかっていたが、ゲノム情報からはこの細菌が異化的に脱窒やアンモニア生成を行いうることが示唆された。この細菌の近縁種のゲノムには脱窒遺伝子群は存在していなかった。skLN1株のゲノム情報の獲得により、胞子形成性Bacilliにおける窒素代謝に関する知見が広がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては精力的に研究を遂行し、査読つき国際誌に多数の論文が受理される等、着実に成果を挙げた。主たる研究対象とする胞子形成細菌群については多様な点からの系統解析を行い、大規模な分類関係の整理に関する提唱を行っている(論文査読中)。この研究は細菌の分類学の発展に大きく寄与するものであり、今後も関連分野でさらなる研究の展開が見込める。以上の理由から、当初の計画以上に研究の進展があったと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、胞子形成細菌群の大規模な再分類を目的とする。細菌の分類においてその最小単位となる種を定義するためにはその種を代表する基準株が必要だが、同様に属、科やそれ以上の高次分類階級の定義にはその直下の下位階級が代表として定義される。つまり高次分類階級におよぶ大規模な再分類を行うためには、下位階級の分類体系の整理が必要不可欠である。 現在行っている胞子形成硫酸還元細菌群に対する大規模な再分類が認められた場合には、その近傍系統および上位階級の分類群の再分類を行う。その後にClostridia綱における大規模な再分類を行って胞子形成細菌系統の分類体系を確立する。
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