2018 Fiscal Year Annual Research Report
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16J40037
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
棟朝 亜理紗 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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Keywords | KNDyニューロン / κ-オピオイド受容体 / キスペプチン / GnRHパルス |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖機能は視床下部-下垂体―性腺軸により、階層的に制御されている。生殖機能障害は、けっして末梢の生殖器官だけの問題ではない。病因の多くは、内分泌系を制御する中枢機構にある。それゆえ、生殖機能障害の理解や新たな治療法の開発には、生殖機能の中枢制御機構の解明が不可欠である。 卵胞発育、精子形成は、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のパルス状分泌により制御されている。近年、このGnRHパルス状分泌のパルスジェネレーターとして、視床下部弓状核にあるキスペプチンニューロンが着目されている。弓状核のキスペプチンニューロンは、GnRH分泌を直接促すキスペプチン、GnRHパルス分泌を促進するニューロキニンB、抑制するダイノルフィンの3つの神経ペプチドが同一細胞上に存在し、KNDyニューロンと呼ばれている。KNDyニューロンがGnRHパルスジェネレーターを形成し、GnRHパルス頻度の調節を行っていると考えられているが、未だ確証はない。キスペプチンの受容体であるGPR54はGnRHニューロンに、ニューロキニンBの受容体であるNK3RはKNDyニューロンに存在することが明らかとなっている。一方で、ダイノルフィンの受容体であるκ―オピオイド受容体(KOR)は局在が不明である。そのため、特にGnRHパルスを抑制するメカニズムが不明である。そこで、KORの局在およびKOR陽性ニューロン(KORニューロン)投射先を解明することとした。 KORは発現量が低いことと、他のGタンパク質共役型受容体と区別できる良い抗体がないことから、局在の解析が難しかった。そこで、KORプロモーター制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)と、順行性神経トレーサー(WGA)を発現するレンチウイルスベクターをラットの脳内に投与し、KORニューロンをタンパク質レベルで可視化し、KORニューロンの局在と投射先の解析をすることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロモーターアッセイで同定したκオピオイド受容体(KOR)プロモーター制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)と順行性神経トレーサー(WGA)を発現するレンチウイルスベクターをラットの脳内へ投与した。KNDyニューロンが発現する弓状核および、KORの発現が報告されている腹内側核(VMH)と背内側核(DMH)へレンチウイルスを投与し、GFPシグナルの有無を観察した。さらに、これらのGFPシグナルがKOR陽性細胞特異的に発現しているかを調べるため、KOR遺伝子(Oprk1)のmRNAに対するin situハイブリダイゼーションとGFPに対する免疫組織化学染色を行った。その結果、GFPはKORニューロン特異的に発現していた。さらに、WGAに対する免疫染色を行った結果、GFP陽性-WGA陽性細胞(一次ニューロン、KORニューロン)と、WGA陽性-GFP陰性細胞(二次ニューロン)を観察することができた。一次ニューロンと二次ニューロンを区別して観察することが可能なラットの作製に成功した。 VMHとDMHのKORニューロンに対して、KNDyニューロンが投射しているかを調べるために、GFPとキスペプチンに対する免疫組織化学染色をい、2色のシグナルを観察した。その結果、KNDyニューロンはVMHのKORニューロンへ投射していることが示唆された。DMHのKORニューロンへKNDyニューロンの投射は確認できなかった。次に、VMHのKORニューロンがKNDyニューロンへ投射しているかを調べるため、GFPに対する免疫組織化学染色とキスペプチンの遺伝子(Kiss1)のmRNAに対するin situハイブリダイゼーションを行った。その結果、VMHのKORニューロンがKNDyニューロンへ投射していることが示唆された。 これらの研究成果は、おおむね順調に研究が進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降、本年度解析を行った投射先の解析について個体数を増やす予定である。さらに、KORニューロンがエストロゲン受容体を持つか、GnRHニューロンへの投射があるかなどを調べる予定である。本研究結果を用いて、GnRHパルス抑制メカニズムを明らかにする。そして、これらの結果を論文としてまとめ、国際専門誌へ投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)