2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J40096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野原 彩香 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-10-07 – 2019-03-31
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Keywords | 言語進化 / 人口統計学 / 言語地理学 / 言語多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は研究期間が10月1日から3月31日のため、以下、半年間の研究実施状況について述べていく。 10月から12月にかけては、岐阜県関ケ原町および滋賀県米原市にて言語調査を行った。今年度は、アクセントに関する調査を主として行った。また、語彙、文法に関する追加調査を行った。 アクセント調査では、統計学的な分析に耐えうるようにサンプルサイズを決定し、それに則り調査を行った。語彙、文法についての追加調査(本調査は昨年度実施)についても、サンプルサイズを考慮した結果、追加調査を決定した次第である。 今回のアクセント調査は、昨年度行った語彙と文法に関するアンケート調査に関連するよう、新たに調査設計したものである。これは、当初予定していた通り、言語の各側面から網羅的にデータを収集し、各側面の変化や伝播の違いを明らかにするためである。この調査では、昨年度のアンケート調査の地域と同一地域において、調査を行い、現在も継続中である。被調査者も前回のアンケート調査で対象とした祖父母世代、親世代、中学生世代の各世代を対象とし、調査内容は、名詞、形容詞、動詞、付属語アクセントである。 10月には地理情報システム学会にて言語変化と外的要因との関係に関する研究発表(ポスター)を行った。この研究では、語彙と文法に関するアンケート調査の集計結果をもとに、言語の経年変化を目的変数、各外的要因を説明変数として、一般化線形モデルへのあてはめを行い、言語変化に与える要因を定量的な観点から明らかにした。 また、12月には日本人間行動進化学会にて、人口規模を焦点とした言語の変化率に関する研究発表(ポスター)を行った。この研究では、10月の研究結果を元に、言語変化に影響を及ぼすと考えられる要素のうちの人口に焦点を絞って、他の言語進化研究や文化進化研究が示す結果との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、2つの学会で発表し、隣接分野および他分野の研究者から様々な意見やアドバイスをいただいた。それぞれの発表は、第25回学術研究発表大会ポスターセッション賞およびHBES-J 2016 若手奨励賞 ポスター部門を受賞した。これを元に来年度以降は、成果を論文の形で公表していく予定である。具体的には、地域間の比較や、共通点の列挙、大規模な調査成果との比較を通して、共通原理の抽出を目標に、近日中に成果を公表する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査・研究により、言語変化の要因については、ある程度見通しを立てることができ、先行研究との整合性などについても確認が取れた。このため、次の段階として、要因の大小によって、言語変化の振る舞いに違いが出てくるかや、変化の要因の種類や影響力の大小が、具体的な言語伝播とどう関わってくるかについて、シミュレーションなどの数理的な方法で探っていく必要がある。
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