2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J40109
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
中嶋 裕子 浜松医科大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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Keywords | 質量顕微鏡 / 核酸 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、組織切片の洗浄法、マトリックス塗布法を検討し、化学合成した核酸をマウスに局所投与し、質量分析イメージングを行うことに成功した。 組織には、核酸よりもイオン化しやすい脂質などの生体分子が多く含まれている。そのため、組織切片上に核酸の標品を滴下して測定してもイオンサプレッションを受けて核酸のシグナルが得られなかった。そこで組織の洗浄法を検討した。有機溶媒(エタノール、エタノールとクロロホルムと酢酸の混合溶液)により洗浄した組織切片上に標品の核酸を滴下して測定したところ、核酸のシグナルを検出することに成功した。 次にマトリクス塗布方法の検討を行った。初めに手動スプレーを用いて、マトリクス塗布を検討した。マトリクス溶液1 mLをエアブラシを用いてスプレーした。しかしながら質量顕微鏡で測定したところ、シグナルが得られなかった。組織内に存在する核酸が表面に抽出されなかったためと考えられた。そこで、分子の抽出効率が高いImage Prep(bruker社)を用いて、マトリクスの塗布を検討した。装置の性質上、スプレー法に比べて粗い結晶が生成したが、空間解像度50 umの測定においては、イメージ像が得られた。 マウス組織にオリゴヌクレオチドを局所投与し、組織を摘出後、パウダードライアイスに埋めて、瞬間凍結し、-80℃へ保存した。クライオスタットにて薄切切片(10 um)を作製し、ITOスライドガラスに接着させた。有機溶媒で切片を洗浄した。 マトリクスには、HPAを選択して、Image Prep(bruker社)を用いて塗布した。Rapiflexにて、ネガティブイオンモードで測定を行ったで。その結果、核酸を投与した組織から、核酸のマススペクトルが検出され、組織内の核酸の分布の様子をイメージングすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、マウスに化学合成した核酸を局所投与して、凍結切片を作製し、組織切片の前処理法の検討を検討した。その結果、マウス組織内から核酸のマススペクトルを得ることに成功した。マトリクス塗布方法を検討することにより、イメージングにも成功した。また、濃度の異なる核酸溶液を投与した組織切片から、定量的に強度の異なる質量スペクトルが得られた。これらの結果から質量分析イメージングは、核酸のイメージング法に有用であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、質量分析イメージングによる核酸の検出法を確立できた。来年度は、確立した手法を用いて、組織内に存在するマイクロRNAのイメージングを試みる。当研究室にある質量顕微鏡によるオリゴヌクレオチドの検出感度を調べたところ、組織内に内在するマイクロRNAの量(平均の値)と比べると感度が足りないことがこれまでの検討でわかった。しかしながら、組織内に内在するマイクロRNAの局在は、一様ではなく、局所的には、質量顕微鏡で検出可能な量が分布している可能性もある。また、癌組織などでは、正常組織に比べて10倍ほど多く発現しているRNAも報告されていることから、質量分析イメージングによる検出を検討したい。
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