2018 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧種アカウミガメの行動可塑性が高い性格に着目した生息外保全手法に関する研究
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16J40115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 宏美 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 行動シンドローム / 行動可塑性 / 移動性野生動物 / パーソナリティ / ウミガメ / 絶滅危惧種 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、対象種と実験場所を変更して実験を行なった。本来ならば、アカウミガメの亜成体を対象に東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター内にある野外水槽で行う予定だった。しかし、H29年度に完成予定であった水槽やその他の設備の建設が大幅に遅れ、実験開始までに設備が整わなかった。そのため、当初の計画で予備の実験場所として設定していた大分県はざこネイチャーセンターが所有する野外水槽で、刺激提示実験を行った。実験には佐伯市越間海岸周辺の定置網で混獲された野性の亜成体アオウミガメを用いた。今年度の実験は、5月から10月まで上記の場所と対象種で、H29年度に設定した刺激を用いて刺激提示実験を行い、一貫性を確認して性格と行動可塑性を調べた。また、2種類の性格次元の行動反応性から行動シンドロームの有無を調べ、行動可塑性との関連性を調べた。その結果、行動シンドロームを示さない集団では、性格が大胆で探索性の高い個体に偏り、行動可塑性が高かった。一方、行動シンドロームを示す集団は性格に偏りがなく、行動可塑性が低いことがわかった。最後に、行動シンドロームを示さない個体と行動シンドロームを示す個体を追跡した。その結果、行動シンドロームを示さない個体の移動距離は長く、行動シンドロームを示す個体の移動距離は短かった。これらのことから、行動可塑性の高い個体は、行動シンドロームを示さない傾向があり、行動シンドロームには生息圏のサイズが関連している可能性が示唆された。また、大分周辺では行動シンドロームを示す行動可塑性の低い個体と行動シンドロームを示さない行動可塑性の高い個体が生息していたことから、これまでの生息環境の履歴が異なる二つの集団が大分に来遊している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アオウミガメの亜成体を用いて a) 状況の違いに応じた行動を計測することで、行動可塑性の高い性格の個体の特定を行い、b) 性格と野外行動の関連性を調べることで、行動可塑性に影響を与える行動特性の適応性を検証する。以上の結果をもとに、野生動物の性格と行動特性から、可塑性の高い性格の個体を特定することができ、生息域外保全の移植個体の選定基準を設定する。 H31年度は、行動可塑性に影響を与える行動特性による適応性の検討を行う。行動可塑性の高い性格を特定後、海洋で追跡して移動環境の情報を取得して生息圏サイズを推定し、性格と生息圏サイズとの関連性を調べる。これにより、高い行動可塑性をもつ性格の個体の行動特性を明らかにし、適応性を検討する。行動計測には、回収が不要なサテライトタグを用い、性格の可塑性を特定した個体を野外の海洋に運び、潜水深度、水温、GPSセンサーを1個体に装着して放流し、衛星を介して活動や移動分散を示すデータを得る。引き続き、どのような性格の個体が行動可塑性の高い個体なのかを調べるべく、性格と生息圏のサイズとの関連性を示すために個体数を増やして精度を上げる。性格の特定や野外での行動追跡で、より説得力のあるデータを得るために、状況によっては調査場所や実験の追加・変更も行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、アオウミガメの亜成体を用いて a) 状況の違いに応じた行動を計測することで、行動可塑性の高い性格の個体の特定を行い、b) 性格と野外行動の関連性を調べることで、行動可塑性に影響を与える行動特性の適応性を検証する。以上の結果をもとに、野生動物の性格と行動特性から、可塑性の高い性格の個体を特定することができ、生息域外保全の移植個体の選定基準を設定する。 具体的には、行動可塑性に影響を与える行動特性による適応性の検討を行う。行動可塑性の高い性格を特定後、海洋で追跡して移動環境の情報を取得し、行動シンドロームの有無と生息場所の広さとの関連性を調べた。これにより、高い行動可塑性をもつ性格の個体の行動特性を明らかにし、適応性を検討する。行動計測には、回収が不要なサテライトタグを用い、性格の可塑性を特定した個体を野外の海洋に運び、潜水深度、水温、GPSセンサーを1個体に装着して放流し、衛星を介して活動や移動分散を示すデータを得る。引き続き、どのような性格の個体が行動可塑性の高い個体なのかを調べるべく、行動シンドロームと生息圏のサイズとの関連性を示すために個体数を増やして精度を上げる。性格の特定や野外での行動追跡で、より説得力のあるデータを得るために、状況によっては調査場所や実験の追加・変更も行う。
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Research Products
(1 results)