2016 Fiscal Year Annual Research Report
偶蹄類二種の密度依存的ハビタット選択および共存機構の解明
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16J40126
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山城 明日香 徳島大学, 大学院理工学研究部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | カモシカ / ニホンジカ / 種間競争 / ハビタット解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、四国ではカモシカの個体数が激減し、その減少要因としてニホンジカの個体数増加による種間競争があげられている。本研究では、2種の種間関係およびカモシカの減少要因を解明することを最終目的として、本年度は、2種が同所的に生息する地域において以下の3つについて解析した。1.カメラトラップを用いたハビタット解析、2.糞分析による2種の食性解析、3.GPS首輪を用いた2種の空間解析 1.カメラトラップによるハビタット利用頻度:徳島県つるぎ町において、4つの環境13地点に赤外線センサーカメラを季節ごとに10日~30日間設置した。撮影された記録からカモシカとニホンジカにわけ、撮影頻度指数(RAI)を算出し、2種間の季節ごとの環境利用頻度を集計した。 2.糞分析による食性解析:カメラトラップを行なった徳島県つるぎ町剪宇において、季節ごとにニホンジカとカモシカの新糞を収集し、食性解析を行なった。糞内の植物片は、(1)木本類・草本類の葉、(2)針葉樹、(3)茎、(4)種子、(5)グラス、(6)ササ、の6つのカテゴリーに分け、ポイント法に基づき占める割合を集計した。 カメラトラップおよび糞分析による結果より、カモシカとニホンジカのハビタットおよび食性は重複しており、2種間で種間競争が見られる可能性が提案される。特に、繊維質が少なく栄養価の高い木本類の葉を中心に採食するカモシカに対し、ニホンジカは、木本類の葉だけでなく繊維質が多く低質のイネ科・ササなど多様なカテゴリーの植物を採食することが知られている。そのため、ニホンジカの個体数増加による採食圧の増加に伴う植物の現存量の減少は、食性の幅が狭いカモシカにとって、不利な状況に追い込まれる可能性が考えられる。 3.2種の捕獲・GPS首輪の装着:本年度ではカモシカとニホンジカのGPS首輪の装着に向けて、徳島県神山町中帰来において囲いワナを設置し捕獲を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、カモシカとニホンジカのハビタット利用様式の違いや重複の程度を明らかにするために、カモシカとニホンジカが同所的に生息する地域において、1.カメラトラップによるハビタット利用頻度の解析、2.糞分析による食性解析、3.GPS首輪による2種の空間利用の解析を目的として行なった。 1と2のカメラトラップおよび糞分析による食性解析では、季節ごとのカモシカとニホンジカのハビタット利用様式の違いや重複を明らかにすることができ、期待通り研究が進展した。一方、GPS首輪による2種の空間利用の解析では、本年度ではカモシカとニホンジカのGPS首輪の装着に向けて、捕獲を実施した。徳島県神山町中帰来において囲いワナを設置し、遠隔装置を用いてカモシカの捕獲を行なった。2016年11月に3頭のカモシカが捕獲されたが、2頭は囲いワナを突破し逃げられ、残りの1頭は幼獣であるためGPS首輪の装着を断念した。その後は、囲いワナを避けるようになったため、2017年3月に捕獲場所を新たに2カ所増やし、現在、捕獲を実施中である。現時点でカモシカおよびニホンジカの捕獲ができていないため、研究が進んでいない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、今年度で得られ得たカメラトラップおよび糞分析による食性解析のデータをまとめ論文として投稿する。また、GPS首輪による空間利用の解析では、今後、捕獲場所の増加を行い、継続してカモシカとシカの捕獲を継続する。 平成29年度に推進する研究として、1.カモシカの集団構造の解析、2.カモシカの減少要因の特定の2つの研究を行う。1では、カモシカの移動や分散を考慮に入れる必要があるため、カモシカの糞のサンプリングを行ない、糞DNAや組織DNAを用いて、四国に生息するカモシカ集団の分集団構造を明らかにする。また、全国に生息するカモシカの組織サンプルを用いて、日本国内でのカモシカ集団形成の過程を明らかにし、今後の保全対策について提案する。2では、カモシカの減少要因を明らかにするために、(1)カモシカが見られなくなった地域、(2)カモシカが安定して生息する地域、(3)近年カモシカの分布域が広がった地域に分け、コドラートを設け下層植生の植生調査を行なう。植生データおよび森林の面積、農地や伐採面積、道路からの距離、川の距離、標高データなどの環境データ、シカの目撃記録データを用いて、GLMMを用いて、AICが最小となるモデルを選択し、カモシカのハビタット選択に影響を与える環境要因を明らかにする。
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