2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J40136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村山(井上) 依子 九州大学, 芸術工学研究院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 概日リズム / 分岐理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
約24時間の生理的活性のリズムは概日リズムと呼ばれている。概日リズムは低温・強光下など環境条件を変えると、アリズミック(無周期)と呼ばれるリズム消失が起こることがある。このようなシステムの定性的変化に対して有効な理論が非線形動力学の分野で知られている分岐理論であり、自律振動がみられなくなるタイプの分岐は主にHopf分岐とSNIC分岐がある。本研究では分岐理論を用いて低温下での「リズムがなくなる」現象を2種類に分類し、理解することを目的としている。 私はシアノバクテリア概日リズム試験管内再構成系の低温域での振る舞いを調べ、19℃付近で周期は変わらないが振幅がゼロになる、つまりHopf分岐のシナリオでリズムが消失する可能性が高いことを示した。またリズムがないと考えられてきた低温(19℃以下)で試験管内リズムがHopf分岐の理論の通り減衰振動子となること、さらに16℃12時間/18℃12時間という低温かつわずかな差の温度サイクルで強制振動を起こすことを明らかにした。本年度は温度サイクルの周期を変えた実験を行い、強制振動の振幅に周波数特異性があることを示した。これは物理学で共鳴と呼ばれる現象である。これらの結果は、低温でも減衰振動子が昼夜のわずかな環境変化に共鳴して大きな振幅のリズムになることで生理的に機能する時計を作ることを示唆している。計算機シミュレーションを行いHopf分岐であれば低温下で共鳴が起こるが、SNIC分岐では起こらないことを確認した。低温でHopf分岐を介して減衰振動子になることは、概日時計を使える温度域を広げる生理学的意義がある。以上の結果を論文で報告した。 また細胞周期をリズムとみなし「分岐理論」を切り口として解析した。アフリカツメガエルの卵割を様々な温度で調べ、低温で周期が著しく伸びる、つまりSNIC分岐のシナリオでリズムが停止する可能性が高いことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年4月に発生した熊本地震で被災し、家庭生活に大きな影響があった。地震前とほぼ同じ生活に戻るまで研究に集中しづらい期間ができてしまったことを残念に思っている。本年度はシアノバクテリアの概日リズム低温停止現象について、特に減衰振動子の共鳴に関する研究が進んだ。この成果を論文にまとめて報告できたという点では評価できると思うが、アフリカツメガエルの細胞周期の低温停止に関する研究には少し遅れが出てしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
シアノバクテリア概日リズムの低温停止現象について、これまでは主に概日リズム試験管内再構成系を用いて解析を行ってきた。本年度に見つけた、これまでリズムがないと考えられてきた低温でも昼夜の環境変化に共鳴することによりリズムが回復するという現象が、シアノバクテリア細胞内でも再現できるかを明らかにする予定である。シアノバクテリアの概日時計はゲノムワイドに遺伝子発現を制御することが知られているので、細胞の生理活性のリズムまで回復するかどうか注目している。遅れているアフリカツメガエルの細胞周期の研究については、サイクリング抽出液で観察されるリズムの低温での分岐を調べるところから進める。
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Research Products
(1 results)