2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16J40136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村山(井上) 依子 九州大学, 芸術工学研究院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2021-03-31
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Keywords | 概日リズム / 分岐理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
約24時間の生理的活性のリズムは概日リズムと呼ばれている。概日リズムは低温・強光下など環境条件を変えると、アリズミック(無周期)と呼ばれるリズム消失が起こることがある。「なぜリズムが見られないのか」という疑問に関して、遺伝学による解析は難しく分子的な機能と結びつけて議論する試みはあまり成功していない。このようなシステムの定性的変化に対して有効な理論が、非線形動力学の分野で知られている分岐理論である。この理論によれば、自律振動がみられなくなるタイプの分岐は主にHopf分岐とSNIC分岐がある。本研究では分岐理論を用いて低温下での「リズムがなくなる」現象を2種類に分類し、理解することを目的としている。 昨年度、シアノバクテリア概日リズム試験管内再構成系が低温でHopf分岐のシナリオでリズム消失するという論文をまとめた。リズムがないと考えられてきた低温域でもわずかな昼夜の変化に共鳴してリズムが回復するという現象を見つけたが、これは試験管内再構成系でしか確認できていない。本年度はシアノバクテリア細胞のリズムの共鳴現象を解析した。低温で培養したシアノバクテリアは恒明条件では明瞭なリズムを示さなかったが、24時間周期の明暗サイクルを与えるとリズムが回復することが生物発光レポーターを用いた解析で確認できた。明暗サイクルの周期を変えると発光リズムのパターンが変化したため、シアノバクテリア細胞内でも共鳴によるリズム回復が起こっている可能性が示唆された。時計因子や関連因子のmRNAとタンパク質のリズムの検出を試みたが、低温ではシアノバクテリアの増殖が著しく遅く長期間の経時的サンプリングが難しかったため、培養装置や実験条件の改良を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
休暇取得のため、今年度の研究計画の一部は次年度以降に行うこととなった。また体調の変化に伴い進めにくい計画が生じ、順番を変更することがあった。そのため、やや遅れた進捗状況にあると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
シアノバクテリア細胞の共鳴によるリズム回復の解析を引き続き進め、概日時計がないと考えられてきた環境で生物が生理的な時計を使っていることを実証する。また概日時計を持つ生物は持たない生物よりも生存に有利であることが知られている。共鳴したリズムを持つシアノバクテリアの環境への適応度を評価するため、競合培養実験を行う。 本研究は、アフリカツメガエルの細胞周期の低温停止現象も研究対象としている。本年度はアフリカツメガエルの卵割が低温でSNIC分岐のシナリオで停止することを示すデータの再現性がとれたが、無細胞系で観察されるリズムの低温での分岐を明らかにするまでに至らなかった。分岐の種類を明らかにした後、受精卵と無細胞系の細胞周期がそれぞれどの位相で停止しているか、停止する位相は一致するかを調べる。また既知のチェックポイントと同等のものかどうかを発現解析から確認し、低温を感知するチェックポイントの同定を試みる。
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