2017 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー駆動極端紫外(EUV)光源による対材料耐力試験の可能性の実証
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16J40173
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 のぞみ 大阪大学, レーザー科学研究所, 特別研究員(RPD) (60581296)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 極端紫外(EUV)光 / x線光学素子 / 表面改質 / 界面制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はEUV光源のデブリ抑制効果に関する定量的評価、極浅表面における異種材料間界面制御、宇宙材料や核融合炉壁材へのEUV光照射の準備を行った。 表面改質などの材料プロセスを行うにあたり、前年度提案および試験を行ったデブリ抑制方式の定量評価を行った。まずイオンコレクターによって、アブレーションプラズマから放出されるXeイオンのエネルギー分布の角度分布を直接実験的に計測した。その結果一枚目の回転楕円鏡には10 keV以上に渡る高速のXeイオンが衝突することが分かった。このデータを用い、TRIMコードでXe粒子の反射特性、スパッタされる回転楕円鏡上をコートするAu粒子の反跳特性を計算した。従来型の一枚の楕円鏡によるEUV集光系、および今回試験した二枚の楕円鏡とアパチャ付きデブリシールドからなるEUV集光系に対してサンプル上へのAuデブリ到達量を比較したところ、従来と比較して3桁程デブリが抑制されていることを確認した。 本年度は高フルエンスEUV光照射をしたAgナノ粒子担持PDMS材料に対して光電子分光(XPS)を用いて、異種材料間での化学結合の変化を明らかにした。C 1s, O 1s, Si 2p, Ag 3dピークのピークシフトとピーク面積の深さ方向プロファイルを求めた。EUV光を照射しないリファレンスサンプルと、10,000 ショット照射後のサンプルで結果を比較した。EUV光照射をすることで、界面近傍ではPDMSのメチル基が切断され、またPDMS側のシロキサン骨格主鎖を構成する酸素を介してAgと結合していることが示唆された。前年度の成果では実験的にEUV光が透明材料においても極浅表面で集中的にエネルギーを付与することが確認されており、紫外線などと比較して、この異種材料間の結合が進みやすい可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EUV光源による材料加工や表面処理を目指した研究において従来より課題となっていたデブリ問題を安価かつシンプルな手法で解決し、更にその能力を定量的に評価するに至った。定量評価により劇的なデブリ抑制が可能であることが数値として実証され、応用研究、産業利用にとって有用な成果となった。 ナノ粒子担持PDMS材料へのEUV光照射実験と、そのXPS分析により、EUV光による結合の切断と同時に異種材料間での結合が進む可能性が示唆された。特にEUV光の深さ方向へのエネルギー吸収が強いことから、他の波長の光と比較し材料の劣化を特に加速させる恐れがあり、EUV光環境材料開発の中で一つの指針となる可能性がある。 当該年度は積極的に国内の学会等コミュニティーに参加し、特に従来から関わってきたプラズマや光源分野とは異なる、材料プロセスなどの分野での研究紹介を数多く行った。海外機関(スイス EMPA)とのEUV-相互作用に関する共同研究も開始し、国内外での研究の拡大につとめた。また、デブリ抑制の研究が完了したことで、学術論文の投稿準備を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画として、EUV光環境材料へのEUV光照射に伴う材料劣化を系統的に調べる。 EUV光の照射パルス数、照射フルエンス、光子フルエンスなどのパラメータに対し、劣化の進行度を明らかにすることを目的とする。初年度に写真フィルムへのEUV光パルス照射で濃淡を示すスポットパターンを記録する方法を見出し、本年度はEUV光のエネルギーや光子数との校正をするためのEUV光エネルギーモニタを本年度準備した。以上二点を組み合わせEUV光フルエンスと強度プロファイルを求める手法を完成させ、照射実験におけるパラメータの取得を可能にする。一方、材料の分析は本年度までの経験から、化学結合と組成の深さ方向プロファイルを求めることができる光電子分光(XPS)分析が有益であると考えられる。また、引っ張り試験により、破断試験を行い、結合の変化との相関を求める。 本研究の研究計画では一つのEUV光環境として、宇宙環境を想定している。宇宙環境では断熱などの観点からAlコートされたポリイミドが用いられている。これまでも高分子であるポリイミドに対し、太陽光からの紫外線による単分子化と破断が報告されているが、EUV光の強い吸収による影響を明らかにしていく予定である。また、得られた基礎的なデータに対し、実際の照射条件よりも高いフルエンスで加速試験をすることの妥当性などを検討する。 得られた結果を、過去ニ年度分の成果と合わせて取りまとめ、国内外の学会および学術誌における発表を予定している。
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