2017 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムによる天然変性タンパク質Bach2の調節と生理学的意義
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16J40189
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 美紀 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ヘム / 転写因子 / 天然変性タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘムは、生命活動にとって必須の補欠分子族である。転写抑制因子Bach2 はB細胞およびT細胞で発現高いことがわかっている。申請者は、ヘムがBach2と直接結合し、成熟B細胞から形質細胞への分化を促進することを示し、液性免疫応答を制御することを見いだした。最近ではBach2が「天然変性タンパク質」であることを示し、複数のヘムがBach2の天然変性領域に結合し、Bach2の構造状態を変化させることがBach2の機能制御に重要である可能性を見いだした。さらに、Bach2に存在する2つのヘム結合様式(5配位、6配位ヘム結合)のうち、5配位ヘム結合がBach2の構造を安定化に関与することを明らかにした。更に、ヘムによるBach2の制御機構を解明するために、Bach2の複合体解析およびB細胞抽出液を用いたpull-down実験により、ヘム依存的にBach2と直接結合するリン酸化酵素を同定した。本年度は、野生型およびBach2ノックアウトマウス脾臓B細胞を用いて、Bach2がTBK1の遺伝子発現を直接制御していることを、定量PCR法およびクロマチン免疫沈降法により明らかにした。TBK1によるリン酸化の評価については、組換えタンパク質を用い、質量分析法により定量的に解析した。その結果、ヘムによってBach2のリン酸化が変化する傾向を示す結果が得られた。また、ヘム存在化における定量的なBach2の複合体解析を行い、ヘムがBach2の天然変性領域に結合することでBach2の構造状態が変化することを示した。そして、ヘム依存的に変化する因子の中にユビキチンE3リガーゼを同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに申請者は、Bach2の天然変性領域と直接結合する因子として、リン酸化酵素TBK1を同定している。前年度までに、申請者は、Blimp-1 EGFPトランスジェニックマウスの脾臓B細胞を用いてTBK1阻害剤存在化で、EGFPの発現頻度を検討した。その結果、阻害剤存在化で形質細胞への分化頻度が低下することを示した。更にTBK1阻害剤がBach2のリン酸化を低下させることも示している。本年度は、ヘムによるTBK1によるBach2のリン酸化調節を定量的に検討とBach2-TBK1経路の生理学的意義として、Bach2がTBK1の遺伝子発現を直接制御することを、Bach2抗体を用いたクロマチン免疫沈降法により明らかにした。さらに、野生型およびbach2ノックアウトマウス脾臓B細胞を用いて、TBK1のmRNAの発現がBach2ノックアウトマウス細胞で亢進していることがわかった。また、ヘム依存的にBach2複合体が変化することを明らかにするために、SILAC法によるBach2複合体解析を行うことで、ヘムがBach2の天然変性領域を調節する意義を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに、Bach2の天然変性領域と直接結合するリン酸化酵素が、Bach2の直接標的遺伝子であること、ヘムによってTBK1によるBach2のリン酸化の頻度が変化する可能性を見いだしている。加えて、ヘム存在化における定量的なBach2複合体解析から、ヘム存在化でBach2複合体構成因子が変化することを見いだした。本年度は、①ヘムで調節されるBach2-TBK1相互作用の分子メカニズムを更に明らかにするために、時間変化におよびヘム濃度変化に伴うリン酸化反応をMALDI-TOF-MS(質量分析)を用いて検出し、引続き解析を行う。また、複合体解析で見いだされたユビキチン化酵素(E3リガーゼ)に関しては、免疫沈降実験、ノックダウン実験およびin vitroユビキチン化アッセイで、Bach2がユビキチン化されるか否かを検討する。最終的には、Bach2-TBK1経路に同定したE3リガーゼがどのように関与するかを免疫沈降実験により検証する。
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[Journal Article] Phosphorylation of BACH1 switches its function from transcription factor to mitotic chromosome regulator and promotes its interaction with HMMR2018
Author(s)
Jie Li, Hiroki Shima, Hironari Nishizawa, Masatoshi Ikeda, Andrey Brydun, Mitsuyo Matsumoto, Hiroki Kato, Yuriko Saiki, Liang Liu, Miki Watanabe-Matsui, Kenji Iemura, Kozo Tanaka, Takuma Shiraki, and Kazuhiko Igarashi
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Journal Title
Biochemical Journal
Volume: 475
Pages: 981-1002
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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