2017 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の集学的治療に対する代謝PETイメージングの検討
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16J40211
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金 舞 群馬大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 口腔癌 / PET / 代謝イメージング / アミノ酸トランスポータ / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔領域の悪性腫瘍に対し、PETイメージングの手法を用いて治療効果予測を行う目的で、研究を遂行している。初年度の研究実施状 況として、2016年4月より放射性医薬品の創薬先進国である北欧の研究機関(Finland Turku PET Center)と共同して研究を行ってい る。4月から5月にかけては、各種培養細胞・実験機器の取扱いの講習に参加し、十分に理解を得た上で共同研究を開始した。また、Tu rku PET Center内での倫理委員会に実験における必要書類(SOP7502)を提出し、Approval statusを得た。施設内の実験承認後、5月 下旬よりBio Bankより提供を受けた癌細胞(ヒト頭頸部癌、乳癌および前立腺癌)の培養を開始した。その後3ヶ月間、hypoxia work stationを用い、様々なタイムポイントを設定し、低酸素ストレス時間およびアミノ酸トランスポーター発現量の検討実験の検証を繰 り返し実施した。 6月にはFinland Naantaliで定期的に開催されている放射線性医薬品開発の研究発表会に参加し、これまでの研究成果および、Finland Turku PET Centerでの実験成果、今後の研究の展望について活発に議論と意見交換を行った。7月以降は、異なるantibodyを用いてWes tern blot analysisでの検証を開始した。そこで、これまで注目していたアミノ酸トランスポーターのL-type Amino acid transporte -1(LAT1)以外にも、低酸素環境下でのストレスにより細胞内代謝シグナリング異常に影響を受けるであろうと考えられるSystemX-輸 送のアミノ酸トランスポーターxCTについても双方の観点から合わせて、発現上昇について検討対象に加え研究を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に得られた、各種癌細胞株の低酸素ストレス下においてのアミノ酸トランスポータ発現量についての実験結果を基盤として、メチオニンPETを応用し、γカウンタを用いた細胞培養におけるトランスポータ発現と放射能の相関についての実験を施行した。対象コントロールとして、低酸素バイオマーカーとしての関連が報告されている放射性同位元素である2-ニトロイミダゾール骨格を持つ放射性フッ素標識化合物2-(2-nitro-1H-imidazol1-yl)- N-(2, 2, 3, 3, 3- pentafluoropropyl)- acetamide ( 以下、18F-EF5)、糖代謝の放射性薬剤の対象コントロールとして、2-deoxy-2-[fluorine-18]fluoro- D-glucose(18F-FDG)についても、アミノ酸トレーサーと比較検討を行うために、同様の手法を用いて、細胞培養株における放射能の相関について実験を施行した。 これらin vitroで得られた実験結果を、現在の進捗状況の第一報告として、2017年にVienna開催された30th Annual Congress of the European Association of Nuclear Medicine(EANM2017)で電子ポスターによる発表を行い、学会会場で座長を始めとした専門家や有識者の研究者らと活発で有意義なディスカッションを交わすことができた。本研究のin vitroからin vivoへ向けた研究発展の課題として挙げられている癌細胞の病理組織像の相違(腺癌や扁平上皮癌などの癌の組織型による考察の違い)や、臨床診療における治療法の相違が、今後臨床研究を進捗するうえでキーポイントであるという具体的なアドバイスと討論を交換した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの基礎的な実験データの仮説によると、腫瘍増大に伴う腫瘍内の低酸素領域に生じたhypoxia- induced tumor growth-1や2を感知し、細胞の核であるDNA上のプロモーターに結合し、LAT1やxCTのupregulationが生じ、細胞内のロイシンの取り込みを増やすことで、mTORC1の活動性が上昇し、癌細胞のタンパク質合成や増殖、分化、活性化につながる。この低酸素環境下におけるアミノ酸トランスポータと細胞内代謝signalingが放射線化学療法を含めた癌治療抵抗性への影響が、明らかになってきている。 本年度の研究成果から得られた結果および考察が、今後の臨床研究課題へのブレイクスルーのポイントとなればと考えている。平成30年度の計画としては、これらin vitroとin vivoの側面から、論文報告に向けての準備のための時間を設けて、研究に取り組んで行く所存である。 また、アウトリーチとして頭頸部癌を始め、放射線治療に対して抵抗性を生じる低酸素環境下での腫瘍代謝動態および病態生理に精通しているTurku PET CenterにおけるHeikki Minn博士、Tove Gronroos博士の研究室での指導の元、共同して論文発表準備を整えていく。Turkuの研究室では、これまでに蓄積した低酸素イメージングに関連するPET薬剤の特性や、基礎医学から発展した臨床経験や病理組織学的検討の比較など、国内外の他の研究施設にはない優位性がある。低酸素ストレス下で生じうるアミノ酸トランスポーター発現へ及ぼす影響は、当該分野に限らず、代謝画像診断から、化学療法など多くのがん治療分野が抱える再発転移の早期発見や治療抵抗性の点において重要な問題であることは、過去にも述べており、引き続きお互いの得意分野となる知識を共有しながら、研究活動を進めていく方針である。
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Research Products
(3 results)