2018 Fiscal Year Annual Research Report
肝炎ウイルスの適応進化メカニズム解明と新規抗ウイルス剤開発への応用
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16J40232
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
竹内(柴田) 潤子 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 特別研究員(RPD) (80647488)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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Keywords | B型肝炎ウイルス / NTCP / 共進化 / dN/dS / positive selection / 受容体 / トランスポーター / ヘパドナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
NTCP(sodium taurocholate cotransporting polypeptide)は肝臓での胆汁酸取り込み輸送体として重要な機能を担うとともに、B型肝炎ウイルス(HBV)およびその近縁ウイルス(ヘパドナウイルス)の感染受容体としても機能するタンパク質である。NTCPの例のように、ウイルス感染受容体は宿主生存に重要な役割を担う場合が多く、アミノ酸サイトごとに保存性が異なる。すなわち、宿主生存に重要な機能に関わるアミノ酸サイトの保存性は極めて高く、感染受容体の機能に関わるアミノ酸サイト(特にウイルス結合部位)ではウイルス感染を回避するためにアミノ酸変異を蓄積(進化が加速)する傾向にある。このことは、宿主のウイルス結合部位の分子進化において、ウイルスによる選択圧が作用していることを意味する。 HBVおよびヘパドナウイルスの感染はヒト以外の脊椎動物でも報告されており、ウイルスと宿主の共進化の歴史は数億年にも及ぶと推定されている。宿主との長い共進化の歴史を有する HBV・ヘパドナウイルスを解析することで、ウイルスと宿主の共進化機構の解明が進展すると期待されるが、そのような報告はこれまでない。そこで本研究では系統学的手法を用い、1)NTCP 配列が種の進化の過程でどのように変化し、ウイルス感染受容体としての機能が保存あるいは変化してきたか、2)HBV・ヘパドナウイルスがどのような分子メカニズムでそれぞれの宿主に適応進化を遂げたのかを明らかにすることを目的とした。 1-2年度中に、哺乳類NTCPの66.2 %のアミノ酸サイトは進化的に保存されている一方で、進化が加速しているアミノ酸サイトを27カ所見出した。その中で158 番目のアミノ酸がHBV の吸着・感染を規定していることをウイルス学的な実験により明らかにした。本年度はこれらの成果を論文化し、学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出産・育児のため平成29年12月~平成30年8月まで研究を中断したが、平成30年5月より「研究再開準備支援期間」を利用して研究を再開し、また、9月からは本格的に再開した。これにより、本研究課題の成果を論文化することができた(Takeuchi et al. Journal of Virology 2019)。本研究は、HBV・ヘパドナウイルスが宿主の選択圧となっていた可能性を初めて示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
NTCPと直接相互作用するウイルスタンパク質であるエンベロープを解析対象とする。データベース上よりHBVおよびヘパドナウイルスのエンベロープ配列を抽出し、系統学的な解析を実施する。これにより、宿主とウイルスの共進化機構についての理解を深める。
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