2017 Fiscal Year Annual Research Report
胆嚢/胆管系発生におけるSox17を中心とした分子ネットワークの解明
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16J40235
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Research Fellow |
鎌田 麻実 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 胆嚢 / Sox17 / Shh / 胆道閉鎖症 / 上皮-間葉系相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮-間葉系相互作用により、胆嚢の機能化が成立する事が分かっている。そこで、shh 特異的なSox17 欠損マウスを用いて胆嚢上皮の形態形成能や胆道閉鎖症の発症の原因を検証した。まず、消化管特異的マーカー(Shh)の時空間的な発現パターンを解析するため、Cre レポーターマウスmT/mG を用いてマウス発生初期から後期の肝外胆管系におけるCre 介在性発現解析を実施した。その結果、今までの報告と同様に、Shh は体齢8.5 日の前腸内胚葉では発現せず、体齢9.5 日に初めて胆嚢原基の一部の細胞に出現し始め、発生中期から後期にはほとんどの胆嚢上皮と近位胆嚢管上皮、一部の遠位胆嚢管や肝管細胞で発現が確認された。そこで、Shh 特異的なSox17 欠損マウスの表現型解析を実施した。体齢13.5 日と出生1 日目の胆嚢/胆管系の上皮の形成能を調べた結果、コントロール群に比較し、Shh 特異的なSox17 欠損マウスでは肝外胆管系の長さは同程度であったが、胆嚢上皮の形成能の有意な低下が認められた。また、Shh 特異的なSox17 欠損マウス胆嚢ではSox17の発現量の低下とそれに伴うSox9/Sox4の発現量の増加によりSox17ヘテロマウスと同様の胆嚢管化が起きている事が判明した。一方、肝臓における肉眼解剖学的な所見において、Shh 特異的なSox17 欠損マウスでは肝臓変性は認められなかった事から、肝炎の発症に至るには胆嚢上皮細胞の脱落の程度、平滑筋の機能、および神経発生など複雑な機構が関与している事が推察できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上皮-間葉系相互作用を基盤としたSox17の上流および下流の分子ネットワークの解明により、先天性胆道閉鎖症の原因解明および治療を目指している。当該年度では、消化管上皮(Shh)特異的なSox17欠損マウスの表現型解析を実施した。その結果、他のSox17遺伝子改変マウスであるShh-cre/Sox17flox/floxにおいてもSox17ヘテロマウスと類似の胆嚢の低形成、および胆嚢の胆嚢管化が起きている事が示唆された(投稿準備中)。これらの研究成果は先天性胆道閉鎖症の原因解明および治療の一助となるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
胆嚢組織におけるSox17誘導シグナルの探索において、トランスクリプトーム解析の結果に基づき、Wntシグナル以外の経路の可能性を検証する。 もうひとつの課題である肝臓・膵臓再生の実現にむけた基礎研究として、胆嚢/胆管前駆細胞から立体的な肝・膵組織の構築を目指す。その上でまず、肝臓、膵臓、および胆嚢組織の細胞系譜を厳密に同定するため、mT/mGを用いた肝臓(Alb)、膵臓(Pdx1)、および、腸管(Shh)の発現部位の特定とこれらのコンディショナルなSox17ノックアウトマウスおよびヘテロマウスのインビボの解析を行う。さらに、間充織との共培養などにより組織構築法を確立する。
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