2016 Fiscal Year Research-status Report
木構造に基づくグラフアルゴリズムの設計法に関する研究
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16K00003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
周 暁 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10272022)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グラフ / アルゴリズム / 最適化問題 / NP困難性 / 多項式時間アルゴリズム / 木幅 / 木分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「アルゴリズムの統一的設計法」の確立を目的とする。様々な実用上の問題は、グラフに関する組合せ最適化問題として定式化できるが、それら多くの問題は一般のグラフに対してはNP困難である。そこで、グラフのクラスをある程度制限することで、効率のよいアルゴリズムの開発が行われてきた。これらのアルゴリズムはグラフの構造を上手く利用することで得られているが、このアプローチにはグラフ理論に関する深い知識を必要とする。したがって、よりアルゴリズム設計者に親和なアルゴリズム設計論の確立・体系化が求められていた。本研究では、グラフアルゴリズム理論の観点から「解くことができるインスタンス条件とその利用法」の解明をすることが研究目的であった。 平成28年度の当初研究実施計画通りに研究を進めてきた。現時点で得られた成果として、グラフ特に木や木幅が小さいグラフに関する理論的な展開とアルゴリズムの効率化があげられる。木幅というのはグラフを木分解する際、分解木の節点に含まれるグラフの点の数の最大値から1を引いた値である。木幅1のグラフは林であり、木幅2のグラフは直並列グラフである。今回の検証で、木や直並列グラフなどの木幅が小さいグラフに対しては、グラフの分割と巧みな動的計画法を導入して、数多くの組合せ問題を擬多項式時間で解くアルゴリズムが存在することが判明した。今後、さらに理論と実験で検証したいと思っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、グラフのクラスをある程度制限することで、効率のよいアルゴリズムの開発が行われてきた。これらのアルゴリズムはグラフの木構造を上手く利用することで得られた。詳細について次のようになる。任意のグラフG=(V、E)が次のような2つの条件を満たす分解木T=(VT、ET)がある。 条件① Tの各節点X∈VT はグラフGの点集合Vの部分集合であり、V=∪Xである。ここで∪XはすべてX∈VTの和集合である。 条件② 任意のVの部分集合Sで誘導されたGの部分グラフが連結であれば、VT(S)から誘導されたTの部分グラフも連結である。ここで、VT(S)={X∈VT | X∩S ≠0}である。 分解木Tの木幅tw(T)=max{|X|:X∈VT}-1を定義する。もし、tw(T)=1であれば、グラフGは閉路を持たない林であり、さらにGは連結であれば、Gは木である。直並列グラフはtw(T)=2の分解木が存在する。そのような木幅が小さい分解木をもつフラフに対して、グラフの分割と巧みな動的計画法を導入すれば、数多くの組合せ問題を擬多項式時間で解くアルゴリズムが存在することが検証できた。具体的には、分解木の各節点の解のベクトル表現の種類が高々グラフの入力サイズの多項式で抑える方法をある程度を発見し、数多くの組合せ問題を擬多項式時間や多項式時間で解くことをある程度研究開発することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
いままで得られた分解木Tの木幅tw(T)=1またはtw(T)=2のグラフに対する結果を拡張し、木幅が小さいグラフクラスに拡張する予定です。数多くのグラフ組合せ最適化問題は、隣接点に同じ色にならないようにグラフの点を彩色する点彩色問題のような点型の問題と、隣接辺に同じ色にならないようにグラフの辺を彩色する辺彩色問題のような辺型の問題に分類される。それぞれの問題の特徴を利用して、巧みな動的計画法を開発するとともに、NP困難性や近似困難性なども調べる予定である。具体的には、分解木の各節点の解のベクトル表現の種類が高々グラフの入力サイズの多項式で抑える方法を研究開発することを継続するとともに、それらの問題を多項式時間で解くことができることを研究開発する予定である。さらに、開発段階で得られたアルゴリズムを分解木Tの木幅tw(T)=1である木や、分解木Tの木幅tw(T)=2である直並列グラフに適用して、アルゴリズムの理論的に評価を行う。 また、開発段階で得られてアルゴリズムのシミュレーションも行いながら、開発したアルゴリズムの実験評価も行う。得られたデータを分析、評価、さらに新手法の導入などにより、効率のよいアルゴリズムを構築する。得られた途中成果をまとめ、国際会議で論文発表し、学術論文誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画のとおりに実施されてきたため、残金は少額である。次年度の助成金と合わせて、もっと効率的に使用するためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額のため、次年度の計画にいれて効率的に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)