2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00005
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
福田 素久 山形大学, 理学部, 准教授 (70771161)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子情報 / 通信路容量 / エントロピー / ランダム行列 / 自由確率 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず研究の目的の一つである「通信路容量への上限設定」に関連する国際共同研究(Calgary University)がIEEE Transactions in Information Theory から出版された。出版に際して、通信路容量へのタイトな上限の評価をしたことを中心に大幅に書き直した。今後このモデルをランダム行列を使って分析する。 もう一つの研究目的である「最適な入力量子状態」に関する国際共同研究(Laboratory of physics theory Toulouse; Technical University Munich)ではランダムな直交行列により生成された量子通信路の高階テンソル積を考え、出力量子状態の最小エントロピーを達成する入力量子状態を模索した。もちろん、完全な解決は難しいため、多少妥協する形で結果をまとめて論文を完成させた(arxiv.org へ投稿)。この論文では当該研究課題の目標が数学的な予想として述べられ、それを正当化する定理が証明されている。これは量子通信におけるエンタングルメントの効果を評価するもので通信路容量の理解に向けて意義がある。また、この予想はもともとは Nature Physics の論文に基づいたものであり、情報学・物理学双方の観点から重要である。 また、同研究の派生的な結果として Meander 問題に関する論文も完成した(arxiv.org へ投稿)。この結果は、ランダム量子通信路を自由確率論的に扱う際に現れる組み合わせ論的な議論のレベルで繋がりがある。今後この Meander 問題での成果が当該研究課題の進展に寄与するかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目標は三つ設定してある。一つ目の目標「最適な入力量子状態をみつける」は部分的に解決された。Ion Nechita (Laboratory of physics theory Toulouse; Technical University Munich)との共同研究ではランダムな直交行列により生成された量子通信路の高階テンソル積を考え、出力量子状態の最小エントロピーを達成する入力量子状態を模索した。結果として、おそらく最適な入力はベル状態のテンソル積になるであろうという予想ができ、論文を完成させた。二つ目の目標「通信路容量への上限設定」は自身の過去の結果を発展させる計画だったが、その出版に際し大幅に書き直す必要が生じたため遅れている。三つ目の研究目的「量子ガウス通信路の非加法性」の Robert Koenig (Technical University Munich)との共同研究は現段階ではランダムに生成した量子ガウス通信路の振る舞い方を分析している最中であるが、2017年夏には部分的な結果が発表できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に交付申請書に記載された方針を踏襲する。新しい研究目的として「自由確率論と量子通信の非加法性の証明」を加える。
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Research Products
(3 results)