2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00012
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小川 朋宏 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00323527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 浩司 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80192235)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報スペクトル / ダイバージェンス / レニーダイバージェンス / 通信路符号化定理 / 情報幾何 / 双対接続 / エンタングルメント / 量子統計力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
情報スペクトル的方法は,通信路符号化をはじめとする種々の情報理論的問題について,定常性や無記憶性などの確率論的条件を一切仮定しない一般的な状況で,最も簡明で強力な方法論を提供する.一方,情報スペクトル量で記述される符号化定理を,定常無記憶性やマルコフ性の元で通常のエントロピー的情報量を用いた符号化定理に結びつける研究も重要である.平成29年度においては以下の研究を行った. 1.古典および量子通信路において,通信路容量より大きな符号化レートを用いて通信を行うと漸近的に誤り確率が1に収束することが知られている.この性質は強逆性と呼ばれ,正解確率がゼロに収束する指数的速度は強逆指数と呼ばれる.本研究では定常無記憶量子通信路においてサンドイッチ型量子ダイバージェンスを用いて強逆指数を決定した. 2.前年度に引き続き,純粋状態エンタングルメントに関して,任意に与えられた始状態から終状態へ漸近的にLOCC変換可能となるための必要十分条件を情報スペクトル的方法により導き,論文としてまとめた. 3.情報幾何学は情報処理に関する不変な性質や構造を微分幾何学的に捉える方法であり,情報量の単調性や保存量に関する考察を行う上で,情報スペクトル的方法と密接な関係がある.本研究では,確率分布全体のなす多様体の部分多様体について,確率単体とマルコフ同型になることと,指数分布族かつ混合分布族であることが互いに同値であることを導いた. 4.その他,ボルツマンマシンにおけるクラスター型模型への近似に関する情報幾何学的考察,盗聴通信路符号化におけるコセット符号化の安全性評価方法,勾配法を用いた通信路容量計算法について研究を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
純粋状態エンタングルメントのLOCC変換可能性や,サンドイッチ型量子ダイバージェンスによる強逆指数に関する研究成果が雑誌論文として採択されており,そこでは研究計画で述べたプラス型情報スペクトル量が重要な役割を果たしている.また,情報幾何に関する基礎理論からボルツマンマシンへの応用に関する成果が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りに研究を進めていくと同時に,情報幾何学的考察に基づいて,プラス型情報スペクトル量の単調性や不変性に関する研究を進めていく.また,純粋状態エンタングルメントのLOCC変換可能性に関する研究を発展させ,情報スペクトル理論を用いて,混合状態のLOCC変換可能性や,量子熱力学への応用に関する研究を進めていく.
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Causes of Carryover |
(理由)当初の研究計画では文献調査と論文執筆を目的とした計算機を購入する計画であったが,これまでに使用している計算機について,耐用年数を超えて引き続き利用可能であったため,計算機の購入を控えた.また,29年度は計画した通り研究補助員を雇用したが,若干の残額が生じた. (使用計画)次年度使用額として繰越をする助成金については,研究補助員を雇用するために使用する計画である.
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Research Products
(10 results)