2017 Fiscal Year Research-status Report
量子通信及び量子計算を限定した量子対話型証明の解析
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16K00015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西村 治道 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (70433323)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子計算量理論 / 量子対話型証明 / DQC1モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
計算資源を限定した量子計算および量子対話型証明に関して,本年度は以下の研究成果を得ることができた.
(1)初期状態として1量子ビット以外のすべての量子ビットがランダムであるような量子計算モデル(DQC1モデル)における古典計算での効率的摸倣不可能性について,昨年度の成果をより現実の環境下に近づけるべく,ランダムでない1量子ビットでさえ減衰によりランダムに近づいた場合を検討した.その結果,減衰の程度によっては依然として古典計算で効率的に摸倣不可能な出力分布が(妥当な計算量的仮定のもとで)存在することを明らかにすることができた.
(2)量子対話型証明において,検証者が事後選択と呼ばれる能力を持つ状況においてその検証能力を明らかにした.事後選択は仮想的な能力で通常の物理でできるわけではないものの,事後選択の能力を付加された多項式時間量子計算はPPという重要な計算量クラスを特徴付けることが知られていて,その成果は弱い量子計算モデルの古典計算による摸倣不可能性の研究などで有効に利用されている.本研究では,検証者が事後選択の能力を付加された多項式時間量子計算であるような量子対話型証明で検証可能な問題のクラスが,多項式サイズのメモリで解ける問題のクラスであるPSPACEと一致することを証明した.この成果はPSPACEという従来からある非常に重要な計算量クラスに対する新たな量子対話型証明による特徴づけであり,今後の量子計算量理論における応用が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続いて,DQC1モデルのように計算資源が限定された量子計算モデルや量子対話型証明の能力について計算量理論の側面からその解明に向けて着実に研究を進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,計算資源が限定された量子計算モデルの計算能力および量子対話型証明の検証能力について個々にその理論的基盤を固めていくとともに,検証者が計算資源限定の量子計算モデルであるような量子対話型証明の検証能力についても,初年度に得た成果を足掛かりにより進んだ解析を行う予定である.また,より現実に即した状況での量子対話型証明の検証能力を明らかにするため,証明者の計算の能力を限定した量子対話型証明についても検討を進める予定である.
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Causes of Carryover |
今年度は国際会議AQISが研究者の大学で開催予定のため,AQISに参加する海外の研究者との研究に次年度使用額で生じている金額を利用する予定である.
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Research Products
(5 results)