2016 Fiscal Year Research-status Report
両面性電力市場におけるプラットフォーム戦略に関する研究
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16K00029
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
徐 ふぁ 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40253025)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 両面性市場 / 電力市場 / プラットフォーム戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、別会社化する送配電事業者、送配電事業者の送配電網を利用する電力供給事業者と電力需要家が参加する電力市場を両面性電力市場として捉え、送配電事業者のプラットフォーム戦略について研究する。平成28年度に、大きな転換期にある電気事業について学習・調査を行った。まず、発電所で作られた電気を如何に電気需要家のところまで届けるかの送電・配電の仕組みを学習した。次に、小売電気事業者が電気を売るために、大手電力事業者が長年かけて整備してきた送電網を使用する託送制度の仕組み、電力会社は時々の電気需要に合わせて電気の供給量を調整する同時同量の原則、託送料金やインバランス料金などを学習・調査した。 同時同量の原則に基づいて、送配電事業者を仲介者、小売電気事業者を資源提供者、電気需要家を利用者として、電力資源の利用を最適化する問題をマッチング問題として研究した。具体的には、資源提供者と利用者は仲介者の提供するプラットフォーム上で取引相手を容易に探索することができ、仲介者が定めた取引ルールに基づき交渉し取引条件に合意することでマッチングが成立する。資源のスペックや料金支払い方法などの取引条件はルールに従い事前に明確にされているので、提供者と利用者が交渉するのは原則として料金のみとなる。また、資源提供者の信頼度(仲介者によっては利用者の信頼度も含む)も仲介者の事前審査や評価システム等によって一定程度保障されるようになっており、提供者と利用者の取引コストは極めて低くなる。従って、仲介者が存在する場合のマッチングの社会的価値は、仲介者が存在しない場合に比し取引コストが抑制される分だけ大きくなると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗状況はやや遅れている。その理由が二つある。一つ目は、日本の電力システムは想定より複雑であり、電力改革の方向性に不確実性がある。たとえば、日本の送電網は独特の形状をしている。全国九つの小さなネットワークに分かれている。また、東日本は50Hzで西日本は60Hzと電気の周波数が異なる。これらの構造は電気を全国的に融通するには不都合である。二つ目は、平成28年度に筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル専攻長に任命された。組織の運営に多くの時間が費やされた。その分、研究に使われる時間が従来より減った。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、日本の送電網は九つの小さなネットワークに分かれている。従来の研究計画では、日本全国は一つの送電網と想定され、一つ大きなプラットフォームで全国的に送電・配電事業を研究する。電力全面自由化後は市場原理を活用して日本全国を一つのネットワークとして運用することが望ましいが、ハード面の制約は短期間で解消することができない。その現状を考えて、これからの研究では、まず、九つのネットワークから、一つの小さなネットワークを用いて、送配電事業者の送配電網を利用する電力供給事業者と電力需要家が参加する電力市場を両面性電力市場として捉え、送配電事業者のプラットフォーム戦略について研究する。その後、九つのネットワーク間の送配電事業者の協調・競争関係について研究する。平成29年度は専攻長になって2年目になる。組織の運営に少し慣れた。今年度からもっと研究に時間を使う。とりわけ、平成28年度に実現できなかったアメリカへの研究訪問を早いうちに実現する。再生エネルギー電力供給事業者を送配電網に取り入れる両面性市場のプラットフォームカテゴリー戦略やダイナミックプライシング戦略を研究する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル専攻長に任命された。組織の運営に多くの時間が費やされた。研究計画で予定されたCarnegie Mellon University, USA、への研究訪問は様々な事情で実現できなかった。また、平成28年年度末ごろ、2本の学術論文の掲載が決定された。しかし、掲載時期は明示されていなかった。そのため、論文掲載料を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実現できなかったアメリカへの研究訪問を早いうちに実現する。再生エネルギー電力供給事業者を送配電網に取り入れる両面性市場のプラットフォームカテゴリー戦略やダイナミックプライシング戦略について研究する。また、2本の論文掲載料を支払う。
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Research Products
(3 results)