2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00033
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
藤原 洋志 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (80434893)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オンライン最適化 / アルゴリズム / 数理工学 / 情報基礎 / 応用数学 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) El-Yanivらの2001年の論文では、最大変動率のみがプレーヤーに知らされる一方向通貨交換問題に対し、達成可能な競合比(=交換アルゴリズムの性能尺度)が求められている。彼らの手法は、この問題に特化した解析を行うことであった。それは非常に強力である反面、交換アルゴリズムの最適性が、理論的にどんな意味を持つのかが明確にされなかった。加えて論文中には、交換アルゴリズムについての具体的な記述がなかった。本研究ではまず、この問題を、無限次元ベクトル空間上の線形計画問題に定式化した。そして、線形計画問題の最適解に基づいて、最適アルゴリズムを陽に表すことに成功した。導出において、解の最適性を線形計画問題の弱双対定理を用いて証明することにより、アルゴリズムの最適性が双対理論から裏づけられることを解明した。
(2) これまでの検索可能暗号では、ランダムオラクルを仮定することにより、適応的安全性と、理論的に最適な索引サイズの両方を実現してきた。ランダムオラクルはいわば理想的な手続きであり、実装は困難なのであるが、索引サイズを小さくするには、これを仮定さざるを得なかった。これに対し本研究では、ランダムオラクルを仮定しない検索可能暗号を提案する。提案する暗号化索引は、階層型ブルームフィルタと単純な整数型配列からなる。階層型ブルームフィルタは、ハッシュ関数に基づく集合のメンバ判定のためのデータ構造のブルームフィルタを階層構造としたもので、使用メモリの削減に大きく寄与している。階層型ブルームフィルタも実装上は整数型配列であるから、提案する暗号化索引の実装はすべて整数型配列で構成される。結果として、適応的安全性を満たしつつ、かつ安全性パラメータに依存せず理論的に最適な暗号化索引サイズを実現でき、しかも簡素に実装できる検索可能暗号を構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) El-Yanivらの2001年の論文では、最大変動率のみがプレーヤーに知らされる一方向通貨交換問題に対し、達成可能な競合比(=交換アルゴリズムの性能尺度)が求められている。彼らの手法は、この問題に特化した解析を行うことであった。それは非常に強力である反面、交換アルゴリズムの最適性が、理論的にどんな意味を持つのかが明確にされなかった。加えて論文中には、交換アルゴリズムについての具体的な記述がなかった。本研究ではまず、この問題を、無限次元ベクトル空間上の線形計画問題に定式化した。そして、線形計画問題の最適解に基づいて、最適アルゴリズムを陽に表すことに成功した。導出において、解の最適性を線形計画問題の弱双対定理を用いて証明することにより、アルゴリズムの最適性が双対理論から裏づけられることを解明した。
(2) これまでの検索可能暗号では、ランダムオラクルを仮定することにより、適応的安全性と、理論的に最適な索引サイズの両方を実現してきた。ランダムオラクルはいわば理想的な手続きであり、実装は困難なのであるが、索引サイズを小さくするには、これを仮定さざるを得なかった。これに対し本研究では、ランダムオラクルを仮定しない検索可能暗号を提案する。提案する暗号化索引は、階層型ブルームフィルタと単純な整数型配列からなる。階層型ブルームフィルタは、ハッシュ関数に基づく集合のメンバ判定のためのデータ構造のブルームフィルタを階層構造としたもので、使用メモリの削減に大きく寄与している。階層型ブルームフィルタも実装上は整数型配列であるから、提案する暗号化索引の実装はすべて整数型配列で構成される。結果として、適応的安全性を満たしつつ、かつ安全性パラメータに依存せず理論的に最適な暗号化索引サイズを実現でき、しかも簡素に実装できる検索可能暗号を構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 本研究では、最大変動率のみがプレーヤーに知らされる一方向通貨交換問題に対し、最適アルゴリズムを与え、かつその最適性が双対理論に由来することを明らかにした。その過程で、2つの問題点が浮き彫りとなった。(a) 最大変動率のみがプレーヤーに知らされるという仮定を置きつつも、最適解を記述するには、最低レート・最高レートのパラメータが必要となる。このことは、元となるEl-Yanivらの論文には言及がないが、大いに注意すべきである。これを解決すべく、整合性を担保できるモデル構築が求められる。(b) 本研究における線形計画問題は、競合比が抑えられるための十分条件に基づいた定式化である。このことはすなわち、線形計画問題の最適解以外の最適アルゴリズムの存在を排除できていない。線形計画問題にこだわらず、すべての最適アルゴリズムを導出できる定式化を追求する。
(2) 本研究では、サーバ管理者に悪意がある場合にも暗号化したまま検索可能な、適応的安全性をみたしつつ空間効率の優れた検索可能暗号を開発してきた。本研究で提案する検索可能暗号では、前処理段階ですべてのキーワード・ドキュメントに基づき暗号化索引を作成し、それをサーバが保持することになっている。逆に言えば、新たなキーワード・ドキュメントの追加やすでに登録してあるキーワード・ドキュメントの削除に対応していない。これを実現するには、単純に、暗号化索引の更新をデータの追加・削除に応じて行えばよいと思われるかもしれないが、それでは当該キーワードに対応するエントリをすべて走査することになり、結果として適応的安全性を満たさなくなる。追加・削除ができる検索可能暗号の開発は多くの研究者が目指しているところであり、本研究においても最優先で取り組む必要がある。
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Causes of Carryover |
・当初計画では、一方向通貨交換問題に関する研究発表のための海外出張を平成29年度に実施予定であったが、研究の進捗状況により、平成30年度に実施することとしたため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) ・次年度使用額は、平成30年度請求額と合わせて外国旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)