2017 Fiscal Year Research-status Report
アメリカンオプションの最適行使境界に対するシステム内挿近似
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16K00037
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
木村 俊一 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (50143649)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカンオプション / 価格評価 / 最適権利行使境界 / 内挿近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的であるオプション保有者の最適権利行使境界に対する閉じた近似公式の導出に向けて,今年度は以下の研究成果を得た. 1.ストックオプション価格評価のためのバリアオプションモデルの開発:ストック・オプションとは,企業がその取締役や従業員に対して,あらかじめ定められた価額で自社の株式を取得できる権利を付与する新株予約権の一種である.内生的に定められる近似境界をもつバリアオプションモデルを用いることで,ストック・オプション公正価値と権利行使時刻分布に対する明示的で閉じた評価式を導出した.この成果は最適権利行使境界を定数とする場合に相当し,内挿近似においても有用な結果となる.この研究成果は,2017年7月にカナダ・ケベックで開催された国際会議IFORS2017で発表され,2018年1月刊行の日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌に掲載された. 2.クーポン付き転換社債の価格評価へのラプラス・カーソン変換アプローチ:2016年度に行ったゼロクーポン転換社債に対する研究結果を、社債にクーポンが連続的に支払われる場合に拡張し,転換社債の価格および転換境界に対する閉じた公式を導出した.転換境界の漸近的性質を解析的に明らかにすると同時に,数値的ラプラス逆変換により取引期間全体にわたる定量的な評価を行った.この成果は内挿近似においても有用な結果となる.研究成果の一部は,2017年11月に京都大学数理解析研究所で開催された「ファイナンスの数理解析とその応用」研究集会で発表され,より詳細な結果は2018年7月にスペイン・バレンシアで開催される国際会議EURO2018において発表予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカンオプションを内包する転換社債と投資に関する意思決定問題に関連して査読付き論文1編を刊行し,さらにもう1編の論文についても国際会議での発表および投稿を予定しているため. .
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は本研究課題の最終年度にあたり、これまでの研究成果を総合して、ある曲線のクラスを仮定した上で,応用上現れることの多いアメリカンコールオプションの漸近的性質と整合する最適権利行使境界の内挿近似を提案する. 1.2016・2017年度の研究成果からは,満期に関する2つの漸近的性質だけでは近似精度を大幅に高めることは困難であることが示されており,これらの性質に加えて取引期間の初期時点における最適権利行使境界の値に関する近似を求めることで,高い精度をもつ近似解を導出できると考えている.このクラスの近似解についてはすでに導出を終えており,数値的な検証が今後必要となる. 2.最適権利行使境界に対する内挿近似については,2018年11月に京都大学数理解析研究所で開催される「ファイナンスの数理解析とその応用」研究集会で発表予定であり,そこでの議論を踏まえて,年度内に論文としてまとめる.
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Causes of Carryover |
(理由)当初予定していなかった国際会議EURO2018(2018年7月,スペイン・バレンシアにて開催予定)への発表招待を2017年秋にセッション・オーガナイザーの1人から受け,国際会議参加・発表に必要な渡航旅費および登録費用を次年度に繰り越す必要が生じたため. (使用計画)平成30年度分助成金の使用計画については当初の申請通りの使用を予定している.平成29年度からの繰越額については,2018年7月に開催予定の国際会議EURO2018において研究成果を発表するための旅費および会議参加費として使用する.
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