2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌谷 研吾 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (00569767)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ベイズ統計学 / モンテカルロ法 / フィッシャー情報量 / 時系列解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
多次元・大標本・複雑なモデルの解析に有用な,対称な提案を用いる次世代モンテカルロ法を研究した.研究初年度の2016年度では方向性を三つに絞って研究を進めた. まず一つの方向は,次世代モンテカルロ法として注目を浴びる既知の手法の理論的解析である.ハミルトニアンモンテカルロ(HMC)法や,その発展的手法は複雑なマルコフカーネルを用いるため,その解析は容易ではない.そのため手法の有効性は経験則に頼りがちである.本研究ではこれら複雑な手法の直接的な解析ではなく,対称な提案と捉えて間接的に解析を行うことで複雑さを回避することを試みた.限定的な結果ではあるが,対象となる確率分布と対称な提案を比較することで一様エルゴード性の十分条件を導出した. また,第二の方向は対称な提案を持つ新手法の解析である.具体的にはMpCN法のエルゴード性を解析した.MpCN法は数値計算と,高次元漸近論によって,従来手法よりも計算効率が高いことが示されていた.それに加えてエルゴード性を調べることで,MpCN法の有効性をよりよく説明することを試みた.実際にMpCN法が従来の手法と比べ,格段に広いクラスの確率分布に対しても幾何エルゴード性を持つことを示した.裾の重い確率分布に対するMCMC法は,一次元の場合を除き,劣幾何型のエルゴード性の観点からしか研究がなされていなかったが,MpCNはそうした制限にとらわれない事が示された.(Journal of applied probability, 54, 2017). 第三の方向は,適合的な手法の提案と,その理論的解析である.対称な提案を用いるモンテカルロ法に対し,フィッシャー情報量などの統計量を効率的に導入する研究を進めた.これについては発展途上であり,次年度に引き続き研究をしていきたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に掲げた三つの方向性に対し,まずひとつ目の既知の手法の理論的解析については,限定的ながら結果を得た.二つ目の,新手法の解析についてはエルゴード性の観点から大いに前進があった.裾の重い分布に限らず,裾の軽い分布に関しても従来手法を凌駕することを理論的に示せることは想定外であった.三つ目の適合的手法の提案については,数値計算を進めているが明確な結果はまだ得られていない.そのため当初目標に対してはやや期待より進まなかったと言える. また,これら3つの方向性とは別に,高次元の観測の分散構造の解析のため,行列に値を取るマルコフ連鎖の解析を進めている.確率過程に対するギブスサンプラーの研究も理論面,計算面からの解析を行っている.これらの研究は国内外の研究者との共同研究である.共に研究の完成にはまだ至っていないが,特に後者は完成間近である.このような当初以外の部分,特に共同研究の部分では大いに研究は進んだ. こうした共同研究を始め,積極的に国内外の研究者との交流を行っている.IMS-APRM(香港)や,日本統計学会(金沢)でのセッションの提案を行った.国内外の研究者の招聘も積極的に行っている.また,本研究のスタートアップと位置づけていたローザンヌでのモンテカルロ法に関するミニシンポジウムでは若手の研究者が集まり意見交換を行い,今後の研究の方向性への直感を得ることができた.次年度以降での研究の発展が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後に関してはいくつかの方向性が考えられる. MpCN法のさらなる発展,新手法の提案である.行列に値を取るMpCN法もその一つである.高次元の解析では分散構造の推定は困難であり,重要な問題である.ベイズ統計学の枠組みでは,重要でありながらもあまり研究されていなかった問題であるが,近年HMC法を利用した推定手法も提案されている.MpCN法ではそうした手法の利点を失うこと無く,計算負荷を大幅に軽減させることが可能だと考えている.理論的整備と数値計算を駆使して解析をすすめる. HMC法やMpCN法を始めとする次世代モンテカルロ法の理論的解析を行う.高次元漸近論は通常,正規分布に近い状況を想定して理論を構築するが,モンテカルロ法においてはその仮定は現実的ではないように思われる.なぜなら,複雑で計算の難しい状況がモンテカルロ法を使う場面であり,正規分布を仮定することはまさにその想定外の場面であるからである.より現実的な状況下での理論的解析をすすめる. 実データでの応用を始める.既に時系列データへの適用は行ってきているが,より具体的な問題の解析を行う.それによって新たな困難さを発見し,手法の改善につながることが期待される. また,引き続き積極的な国内外の研究者との交流を行う.2017年度は複数の国外研究者の招聘や,複数の研究者の研究施設への滞在,2018年度にはシンガポールでの一ヶ月に及ぶ研究集会の共同運営,台湾でのミニシンポジウムのセッションの共同運営を予定している.
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Causes of Carryover |
本年度は研究外の理由により出張が想定より少なかった上,複数の研究者に訪問していただいたため,海外研究者の研究施設への訪問を行わなかった事が主な理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は大規模計算のための計算機が必要になる上,研究旅費の支出が多いため,計算機購入費および研究旅費に使用する.
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Research Products
(10 results)