2017 Fiscal Year Research-status Report
群発地震活動の非定常点過程モデルの構築と火山活動や非地震性すべりの監視法の研究
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16K00065
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
熊澤 貴雄 統計数理研究所, リスク解析戦略研究センター, 特任助教 (60649482)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 点過程モデル / ETASモデル / 非定常ETASモデル / ベイズ統計 / 熊本地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
定常ETASモデル(Ogata 1988,1989)や非定常ETASモデル(Kumazawa and Ogata 2013,2014)等の点過程モデルを用いて、2016年熊本地震発生前後の地震活動の詳細を余震域周辺の地域において調査した。当研究では熊本地震発生前の地震活動の相対的静穏化と2011年東北沖地震による小領域での遠隔的誘発を明らかにした。また、本震発生に至る前震時系列での地震活動静穏化と、本震以降の余震時系列における地震発生強度の減衰状況と地震クラスター間の誘発関係を推定した。この研究によって一連の熊本地震における地震発生過程の統計学的側面の理解が進むと同時に、より一般的な地震発生時系列の理解が促進されることを期待している。なお、当研究はKumazawa et al. 2017としてEarth, Planets and Space (EPS)誌で出版し、2018年2月の第218回地震予知連絡会で重点検討課題として報告した。 Kumazawa et al. [2010]は2000年代前半に東北地方広域で起こった地震活動の変化をETASモデルの変化点解析から検出し、 2008年岩手・宮城内陸部地震前の前駆的なスロースリップによる地殻変動によって発生したものであるとする説明が可能であることを示した。 しかし2011年東北地方太平洋沖地震発生までの延長データを用いた場合、上述の地震活動変化は東北地方太平洋沖地震前に発生した、東北地方東方沖のプレート境界上のスロースリップに起因するより大きな地殻変動によって説明できることを解析した。当研究結果は今年度初期の学会などに於いて報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筆者が提案する非定常ETASモデルは公開に向けてプログラムが整備されつつある。また、同モデルや幾つかのバリエーションモデルを用いて、複雑な地震活動の理解が進みつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまでの研究結果により非定常ETASモデル(Kumazawa and Ogata, 2013, 2014)が地震過程における或る種の特性を捉える上で役に立つことが分かってきた。一方で地震検出率の時空間上での不均一性やマグニチュードの比較的大きな地震直後のデータ欠損が使用カタログに無視できないレベルで潜在する場合には、それを考慮に入れなければ解析結果の信頼性が落ち、モデルの応用範囲が大きく制限されることも分かってきた。現在は適切な下限マグニチュードを設定することで解法としているが、一方で地震活動を断層周辺での一連の連鎖反応の総体と見た時に、検出から漏れる規模の地震活動も比較的大きな地震と同様に連鎖における本質的な要素と考えられ、非定常ETASモデルのパラメータ時間変動の推定にも影響すると考えられる。解決策として、Ogata and Katsura (1993)の地震検出率とb値の時間変動の同時推定モデルを何らかの形で非定常ETASモデルに組み込むことを考えている。 (2)地震の余震時系列から推定される背景地震活動強度の変化から、所謂余震は2種類に分類されることが、先行調査において判明してきた。すなわち、余震時系列には応力の集中によって発生した地震と、間隙流体圧による断層強度の低下により発生したものとが同時的に発生していると考えられる。余震の時空間分布からそれらを類別することが非定常ETASモデル等で可能かどうかを調査する。またb値の時間変化にもある種のパターンが見られ、余震の時空間分布のマグニチュード依存性と合わせて余震発生過程の理解を深めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
申請時に予定されていた当該年次の海外出張が前年度に変更になった。
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Research Products
(6 results)