2016 Fiscal Year Research-status Report
スパース正則化を利用した多変量時系列モデリングとその応用に関する研究
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16K00067
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
川崎 能典 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (70249910)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ボラティリティ / 経験類似度 / モデル信頼集合 / スパース正則化 / 円滑閾値型推定方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、応募者がこれまで取り組んできた円滑閾値型推定方程式によるスパース正則化法の方法論を、時系列解析の諸問題に水平展開することである。事例候補のひとつに、多変量ボラティリティモデルでの変数選択があり、今年度はボラティリティモデルの予測性に関する研究を行った。 事例ベース意思決定理論に基礎を置いた経験類似度 (ES、 Empirical Similarity) という概念を適用することにより,異なるモデルから生じるボラティリティ予測値を結合する方法を研究した。経験類似度の枠組みでは,意思決定者が予測モデルや予測値の尤もらしさに関する確率評価を行わずに,専ら類似性のみに依拠して将来を予測することができる。具体的には,過去のモデル予測値と対応するボラティリティの実現値との距離を定量化することによって,予測の組合せの重みを決定する。そして,決定された重みを用い将来のボラティリティを予測する。 今年度の研究では,経験類似度モデルから得られたボラティリティの予測値とその他時系列モデルの予測値とを実証的に比較を行った。モデルの予測力比較については,誤差関数に基づくモデル信頼集合 (Model Confidence Set、 MCS) を用いることにより,複数の銘柄と推定予測期間におけるモデルの予測力を順位付けし,最良モデルの累積頻度を分析し評価を行った。 この内容は、国際会議 The 36th International Symposium on Forecasting(サンタンデール、スペイン、2016年6月21日)で口頭発表した。また、論文に取りまとめて学術雑誌に投稿し、H29年度内の掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ボラティリティモデルを素材とすることに定めたのち、最新の観点を取り込むために、経験類似度を用いた枠組みに取り組むこととなった。一方、比較対象としてheterogenous autoregressionモデル(HAR)モデルの変種多数を取り上げたことから、予測能力の比較分析を行うシミュレーションに多大な時間を費やした。この段階で、既に論文としてまとめるべき成果が整ったため、当初の計画に沿って新たな分析を進める手前で、論文作成と投稿、改訂に時間を費やし、多変量ボラティリティモデルにおける構造探索という所期の問題設定に、年度内に一定の結論を導き出すには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画ではH28年度に予定されていた、対数死亡率に対するLee-Carterモデルの残差解析に着手する。先行研究によれば、Lee-Carterモデルの残差は白色化されているとはいえず、何らかの残余効果が見られる。この残差時系列に多変量自己回帰モデルをあてはめようとするとベクトルの次元が高いため、無闇にラグを深く取れない。ここでは生年の順序という構造を利用して、同時応答を含む形で単一方程式ベースの推計を行い、その際にパラメータに対して絶対値制約を課すアプローチを考える。 一方、当初の研究計画ではH29年度に取り組む予定であった多変量ボラティリティモデルに関しても、H28年度で着手した関係で研究を進める。多変量ボラティリティモデルの主流は、一変量ボラティリティモデルの接合によるので、H28年度の研究内容は、研究計画全体の中で必ず活かされる。
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