2016 Fiscal Year Research-status Report
超大規模相互結合網のための高追従性分散制御方式の研究
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16K00068
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
横田 隆史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90334078)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 相互結合網 / パケットスケジューリング / 輻輳制御 / 並列計算機システム |
Outline of Annual Research Achievements |
相互結合網は並列計算機において通信の機能を司る構成要素であり,その成否はシステム全体の性能を大きく左右する。多数の演算ユニットから成るシステムでは,多数のルータ素子を組み合わせることにより相互結合網が構成される。演算ユニット間の通信はパケットを単位に複数のルータを経由することで行われるが,通信頻度が高い状況ではパケット間の干渉により輻輳が発生し大きく通信性能を損なう。 本研究では相互結合網上での通信状況が事前に特定できないものとし,稼働中に臨機応変に制御することを考える。ここで雪崩的に生じるパケット流に対して輻輳状態になる一歩手前の状況に抑えることを理想的な目標とし,そのために既往の知見を基盤としながらさらに機動的な制御方法を創出することを目標としている。本年度(初年度)は,大きく以下の事項を重点的に実施した。 【「理想状態」の解明】 工学における制御は,目標状態を明確に設定しそこに近づけることにある。本研究での制御目標は上述の「理想状態」であるが,その内容は未だ詳らかになっていない。このため,本研究の第一歩として上述の理想状態の明確化を検討した。すなわち,雪崩的に発生しようとするパケット流に対して,輻輳を発生しない寸前の状態で制御できている状況を提示し,その状態を目標値として相互結合網の制御に供する。この課題に対して,並列計算で用いられる典型的な通信パターンによりモデル化したうえで,粒子群最適化(PSO)および深層学習(deep learning)の技術を導入し,実験的な手法により最適化を試みた。 【評価実験環境の整備】 GPGPU技術を使うことで相互結合網の動作シミュレーションを飛躍的に向上させる既往研究の成果をさらに発展させ,汎用性を高める研究を実施した。同時に粒子群最適化等の応用にも対応可能なように拡張したほか,深層学習における学習データの作成にも大きく貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【「理想状態」の解明】 相互結合網制御のための理想状態を求めるため,制御状況を直截的に解くのではなく,各々のパケットの生成時刻を設定するパケットスケジューリング問題に置き換え,組合せ最適化問題として検討を行った。唯一の理想状態を求めるのは組合せ爆発から現実的ではないため,探索能力に優れ準最適解を期待できる粒子群最適化を用いた。比較的小規模な相互結合網を対象とした実験の結果,既往の制御手法によるものよりも大幅に性能向上を得られることが判明した。この求解にあたっては著しい局所最小(local minima)が観測されており,すなわち,同等の性能を示す解が多数存在することが明らかになった。一方,パケットのスケジュールをパラメータとして深層神経回路網に入力し,通信性能の優劣を判別させる学習を行わせた。最初の試みとして「優」「劣」の2値判別を行う単純なモデルとしたが,高い識別性能を得られることが分かった。粒子群最適化の試みに関しては,学会口頭発表のほか学協会誌に論文を投稿中である。また深層学習の成果についても学会口頭発表を行い,学生奨励賞を受賞している。 【評価実験環境の整備】 既往研究の成果を拡充し,汎用性を持たせることに成功した。上述の深層学習の課題では,学習のために膨大な数のデータが必要であったため,本成果を一部改変し,数万の素データを生成した。一方で,高速なシミュレーションのためのモデル化に制約があることから,既往研究で用いていたシミュレータとの互換性の点で検討課題が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
相互結合網の「理想状態」の解明においては,上述の局所最小(local minima)の問題が残っている。すなわち,本年度の研究により準最適解は得られたのであるが,ひと通りではなく多数存在するため,それらを実際の制御に供するための方策が新たな課題として浮上している。これについては,同時に実施している深層学習の成果を併用することを試みる方針である。深層学習については,現在様々な試みが盛んに発表されている状況であるから,さらに本研究に向いた適用手法を検討していく。 また、理想状態を解明するために膨大な数のシミュレーション実験を行ったが,その過程で相互結合網上でのパケット流の状況と,その結果得られる通信性能(スループットと遅延)について,当初の想定とは異なる知見が蓄積されつつある。パケット間の干渉の回避を徹底すると輻輳は発生しないが,十分な通信性能を達成できない。粒子群最適化により得られた準最適解を解析することにより,最適な制御手法を検討していく。
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Research Products
(18 results)