2017 Fiscal Year Research-status Report
ソフトウェア品質/信頼性に基づいたテスト工程の経済学的分析と最適化
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16K00098
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
井上 真二 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (60432605)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ソフトウェア信頼性 / 検出可能フォールト数 / 2変量ソフトウェア信頼性モデル / テスト予算制約 / 信頼度目標 / 多属性効用理論 / ベイズ推測 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に基づいて,平成29年度からは多少異なる観点から,ソフトウェア開発管理面における諸問題を解決するためのアプローチを議論した.まずは,予算やソフトウェア信頼度目標などのある一定の合理的な制約の下で,品質およびコストの各要因に基づいて説明される開発者側のテスト戦略に沿った効用を定式化し,開発者側の行動(リスク愛好的,中立的,回避的)に依存しながらこの効用を最大化するソフトウェアの最適出荷問題について議論した.特にここでは,これら複数の効用を多属性効用関数として開発者側の総合的効用を定式化し,いわゆる多属性効用理論に基づき最適な出荷時刻を見積る方法について議論した. 一方,平成28年度での実施内容を発展させ,2変量ソフトウェア信頼性モデルに基づいて定量的に推定できる信頼性評価尺度である平均ソフトウェア故障発生時間間隔や運用ソフトウェア信頼度などを,一定の予算制約下において最大化するために必要なテスト時間や投入するテスト労力量を推定する信頼度最大化問題についても定式化を行い,解析的に最適値を求める手法を議論した. さらに,研究課題に関連する話題として,ソフトウェアの信頼性評価も含めた開発管理および経済的側面からの開発管理に関する諸問題についても議論した.具体的には,信頼性評価結果やソフトウェアの最適出荷時刻の推定における不確実性を考慮した手法をベイズ推測のアプローチに基づいて提案した.そもそも現場では,従来の点推定手法に耐えうる十分なデータが得られることは稀であり,信頼性評価結果やソフトウェア最適出荷時刻の推定などでは,それらの不確実性を陽に考慮しなければならない.この取り組みは,適切な統計/推定手法に基づいて不確実性を考慮しながらテスト工程管理および経済的分析を行うための基礎的技術を開発/検討したものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題の当初計画と照らし合わせ,現在の達成状況はおおむね順調に進展しているものと判断している.平成29年度では,一定の予算制約下での信頼度(例えば,平均ソフトウェア故障発生時刻やソフトウェア運用信頼度)最大化するテスト計画手法についてある一定の成果を得ることができた.また,多属性効用理論を用いた開発者視点における一定のテスト戦略下でのテスト実施計画手法についても,ある一定のアプローチを定式化し,これらの手法の特徴を捉えるための感度分析も行うことができた.さらに,これらの研究を実施する中で,ソフトウェア信頼性データの不完全性を考慮した信頼性評価および経済的視点に基づいたソフトウェア最適出荷時刻の区間推定手法についてもベイズ手法に基づいたそれらの推定手法を議論した.ただし,これらの成果の中には,再検討を必要とする部分も多くあり,すべての結果について公表できる段階ではないものも多く含んでいるため,今後さらなる活動が求められる.以上の点を上記の判定理由とする.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従うと,予定をしていた研究内容をおおむね実施できたものと判断する.ただし,これらの研究成果に対して,実際に観測されたソフトウェア信頼性データを用いた数値実験を通じた提案手法の妥当性の検討,さらに,理論的な面での再検証を行う必要があり,これらを当研究課題の最終年度の活動の1つとして位置付ける.実測データについては,すでに文献やディポジトリ等から得られているため,それらのデータを活用する予定である.また,テスト工程管理における経済的分析のための基盤となるソフトウェア信頼性評価技術および統計的推定手法についても,実環境の様子を反映した効果的なアプローチを並行して開発および提案をして行く予定である.さらにその中で,必要があれば研究調査および資料の収集も行い,適切な学会等でも可能な限り公表して行く考えである.
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