2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00111
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
長岡 直人 同志社大学, 理工学部, 教授 (80180462)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電池劣化診断 / 稼働時診断 / 過渡現象 / 内部インピーダンス / モデリング / 数値計算 / 組み込み機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
電池の電圧・電流・温度など,電池を利用した機器の稼動時に得られる情報のみから,2次電池の特性を表現する電池モデルを構築する数値解析の基本手法を開発した。時々刻々変化する電池電圧・電流は一種の過渡現象で,この時間領域過渡現象から,電池内部インピーダンスなどの周波数特性を得た。このインピーダンスは電池の劣化と密接に関連しており,機器稼動時の特性から劣化診断が可能であることを確認した。なお,解析手法は電池と共に用いられる電池管理システム(BMS)などに組み込み可能とすることを想定し,極力計算負荷の小なるアルゴリズムとした。 (1) 各種2次電池の劣化特性:現在広く用いられている,鉛,ニッケル水素,リチウムイオン電池を対象に,電池の劣化特性を得るため,充放電を繰り返すことにより劣化電池サンプルを作成した。またこの間に電圧・電流過渡波形を測定し,劣化に伴う過渡応答の変化を観測した。また,電池特性は温度に強く依存するため,温度依存性についても測定した。 (2) 稼動時電池モデリング手法:電池電圧・電流過渡現象から電池の内部インピーダンスを求める,計算負荷の小なるアルゴリズムをこれまで電力機器のモデリングに利用してきた手法を応用して開発した。Z変換を基礎とする時系列解析法を適用し,複素計算を用いることなく周波数の関数で定義されるインピーダンスを効率的に求めるマイクロコントローラ用の計算手法を構築した。得られた内部インピーダンスなどの特性から電池の等価回路を導出し,過渡応答を再現できる電池モデルを構築した。なお,FPGA搭載劣化診断装置を念頭に,ハードウエアFFTを利用したインピーダンス導出法についても検討を加えた。 (3) 劣化診断装置と電池モデルの評価:電池劣化診断装置の礎となる充放電装置プロトタイプを,マイクロコントローラを用いて製作した。本装置は,鉛,ニッケル水素,リチウムイオン電池いずれにも対応し得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,これまで有していたリチウムイオン単電池の測定系を一部改修し,鉛・ニッケル水素電池試験用に一部装置を改修した。これにより,現在広く使用されている2次電池である,鉛,ニッケル水素,リチウムイオン電池の充放電試験が可能となった。これら試験装置を用いて充放電を繰り返し,劣化電池サンプルを得ると共に,適時過渡特性を測定した。これらは当初の計画通りである。 これに加え,3種の電池に対応し得る小容量電池用の充放電試験装置を自作した。これにより,劣化サンプルをより多く得ることが可能となった。また,本装置は可搬型としたことにより,本学以外でも簡易試験が可能となった。よって,今後他研究機関との共同研究を円滑に進める環境も整えられた。これは当初の計画より先んじて実現した。 なお,これらの試験と並行して,これまでの研究により得られた劣化したリチウムイオン電池のデータを用いて,劣化診断計算アルゴリズムに改良を加えた。この計算は主に実測データから電池特性を抽出する計算と,抽出された特性を用いて劣化を診断する計算に大別される。本年度は主に前者について検討した。これまでに,電力機器モデリング用に開発した過渡領域法であるフーリエ・ラプラス変換法,z変換法,Pade近似法,ARMAモデリング法いずれもリチウムイオン電池,ニッケル水素電池,鉛電池のモデリングに適用可能であることが明らかとなった。なお,組み込みコンピュータにアルゴリズムを搭載するには,現状ARMAモデリング法が有効で,FPGAに実装する場合にはフーリエ・ラプラス変換法も有効であることが明らかとなった。これら,ソフトウエアに関する事項は,概ね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 特性測定:各電池の充放電を繰り返し,劣化電池サンプルを作成すると共に,過渡応答を測定する。 (2) モデリングアルゴリズム開発:これまでの検討結果から,リチウムイオン電池劣化診断に適するより計算負荷の小なる計算アルゴリズムの開発を行う。さらに計算負荷を低減するために,サンプリング時間,量子化数などの測定条件について検討し,劣化診断に必要かつ十分な最適測定条件を明らかにすると共に,安定にパラメータを抽出できるよう,計算アルゴリズムを改修する。 ニッケル水素電池・鉛電池の劣化試験データがこれまでに一部得られたことより,早急にリチウムイオン電池の特性との差異について検討を加え,これら電池に対しても,安定にパラメータが推定できるアルゴリズムとする。また,(1)項によりデータが順次得られる予定であるので,さらなる汎用性の高いアルゴリズムとする。 (3) 劣化診断アルゴリズム開発と診断装置:モデルパラメータと劣化の相関性を求め,得られたモデルから劣化診断を可能とする関数を求める。また,組み込みシステムへの移植を想定し,劣化診断アルゴリズムを最適化し,診断装置プロトタイプの設計・試作を行う。なお,このプロトタイプは,まず本年度製作したマイクロコントローラを用いた充放電装置を基に開発する。また,FPGAを用いたシステムについても検討を進め,用途によりマイクロコントローラ,FPGAいずれが適するか検討を進める。なお,試作過程で得られたノイズなどの条件に対する安定性を高め,前項のモデリングと劣化診断アルゴリズムの改良を行い,実用的なシステムとする。 なお,3種の電池を同じアルゴリズムで診断し得ない場合も考えられるが,異種の電池を組み合わせた蓄電システムは想定し難いため,それぞれの電池に最適なアルゴリズムとする。このため,本研究では,複数のアルゴリズムについて検討を加える計画としている。
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Research Products
(6 results)