2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00167
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
宮村 浩子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 副主幹研究員 (20376859)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 環境モニタリング / 可視化 / 空間線量 / 領域抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島県で実施されている線量測定結果をヒトの直感と結び付けて提示する可視化ツール開発に向け,本年度はタブレットPCをプラットフォームとしたモニタリングデータの可視化ツールを開発し,バス会社に提供し,試運用を開始した. 福島県では,住民の身近な移動手段である路線バスに線量計が積まれ,毎日の運行時に空間線量を測定している.この測定データを研究者や専門家だけでなく一般市民も観察でき,欲しい情報を容易に取得できるような可視化ツールを開発した.本年度は,情報提示媒体の開発,データの計測・格納,計測データの提示それぞれで必要な技術開発に取り組んだ. 情報提示媒体では,モニタに搭載されたカメラから外の風景を取得し,ディスプレイに表示する.このとき,表示した値が私有地である民家や田畑に提示されると,そこで計測した値と勘違いされるおそれがあり,風評被害につながる可能性がある.そこで,計測値は計測した地点に正しく提示されるよう,提示領域を道路上に限定する.そのために,景色画像から,道路の領域を特定する技術を開発した.具体的には,まず多重解像度解析技術を用いて輪郭を抽出する.これによって建物のような3次元物体の輪郭だけでなく,道路の道端に位置する輪郭も抽出する.次に,道路は景色の下から上に向かって平行に存在する2本の直線で囲まれているという性質を利用して,2本の直線で囲まれた領域を特定する.このようにして情報を提示する道路領域を限定する技術を開発した. また,データの計測・格納では,同じバスが前日以前に計測したデータをタブレットPCに転送しておき,GPSによって得られた位置情報から画面に表示されている空間領域のデータを選択し,提示する技術を開発した.本技術を組み込んだ可視化ツールをインストールしたタブレットPCをバス会社に提供し,乗客が実際に線量データを観察できるよう試運用を実施した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バス会社での試運用を実施するにあたり,バス会社だけでなく市町村等関係する団体との打ち合わせが必要であり,また提示する情報に対して精査する必要があったため,研究の進みは当初の計画から多少遅れている.しかし,運用が軌道に乗ったことと,データ提示に関して実績のある共同研究者の協力が得られることから,今後は研究に注力でき,予定通りの進み具合になる予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は計測データ提示に重点的に開発を進める.日常的な感覚でデータの値の分布を観察し,捜査するために,「時空を超えたデータ探索可能な高次元データ提示空間の作成」と「高次元空間への適切な線量データマッピング手法の検討」に取り組む. これは言い換えると,高次元データに対して,ヒトの直感を利用したデータ提示技術,日常に溶け込んだユーザインタフェースの開発に挑戦することとなる.ここでは,日常空間を覗くように高次元計測データを探索する可視化システムを実現するために,時空間画像という2次元画像を時間方向に整列した3次元データを用いる.この時空間画像は,時刻と水平方向に断面を切ることである地点での変量データの時間変化を観察できることが知られている.このような従来の情報の見せ方に加えて,それぞれの時刻での計測データを紙芝居の紙とみなして,ぱらぱらめくるように興味ある時空間を探索できるようにする.興味ある時刻が特定できた場合には,その時刻軸方向に高さ方向の空間軸zをとり,3次元空間を作り出すこともできる.この3次元空間は直方体であり,カメラから得られた風景画像を領域分割して各面に貼り付けると,直方体が実空間の中に入り込んでいるように観察できる.この直方体を実世界に溶け込むような可視化手法によって示すことで空間線量の値を提示する. また,開発した技術は既に試運用している可視化ツールに組み込み,バス利用者に利用してもらい,評価を得る.ここで得られた評価を参考に,開発すべき技術はその都度検討し,ヒトの感覚に合った情報提示を精査する.
|
Causes of Carryover |
当初計画では,平成28年度にモニタリングデータ可視化ツールをバス会社においてバス20台を使用して試運用する予定であった.そのためにタブレットPCを20台購入する予定だったが,OSの異なる候補機種を先行購入して動作等を確認した結果,購入機種選定に時間を要することとなり,20台の購入を平成29年度に変更したことにより次年度使用額が生じることとなった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
モニタリングデータ可視化ツールのバス会社における試運用のためにタブレットPC20台の購入費用に使用する.
|
Research Products
(3 results)