2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00190
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
山崎 恭 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (10318785)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生体認証 / 携帯端末 / 暗号・認証等 / 画像,文章,音声等認識 / マルチファクタ認証 / テンプレート保護 / コンテキストアウェアネス / 生体ビット列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,スマートフォンやタブレットPCなどの携帯端末において,個人の身体的特徴あるいは行動的特徴に基づき本人確認を行う生体認証システムの信頼性対策技術について検討することを目的とし,リソースに制約のある端末でのユーザの利便性やシステムの信頼性の維持,利用環境の変化に対する高い頑健性,適切な生体情報の保護機能の具備の三点を柱とする従来にはない携帯端末に適した生体認証システムの実現を目指している. 平成28年度の主要な研究実績は,1.研究で使用する生体情報データベースの整備と実験システムの構築,2.コンテキストアウェアネスなマルチファクタ認証システムの提案,3.携帯端末から取得可能な生体情報に基づく生体ビット列生成手法の提案の三点である.1.については,携帯端末に標準的に具備されるセンサから取得可能な顔画像,音声,筆記を生体情報として収集し,研究に必要な生体情報データベースを整備した.また,仕様の異なる複数の携帯端末を導入して生体情報の収集と認証アルゴリズムの評価に使用する実験システムを構築した.2.はシステム自身がその場に適した認証方式を適応的に選択するという新たなコンセプトに基づく認証システムの提案であり,利用環境の変化に対して高い頑健性を有する認証システムを実現するための中核技術の一つと位置付けられる.3.は携帯端末から取得可能な筆記情報と音声を用いて,個人の特徴を反映した生体ビット列を生成するアルゴリズムの提案であり,生体情報を保護するテンプレート保護技術に必要不可欠な基盤技術の一つと位置付けられる.ここで,2.と3.については,実際の利用場面を想定した複数の異なる入力環境で取得した生体情報に基づくシミュレーション実験を行い提案手法の有効性を明らかにした. なお,当該年度の研究成果は,学術雑誌への論文掲載,内外の研究会やシンポジウムでの講演という形で発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,1.研究で使用する生体情報の収集と実験システムの構築,2.認証時における生体情報の取得環境の変化が認証精度に与える影響についての評価の二点を主要な検討項目に設定した.1.については,現時点で必要最小限度のデータベースは整備されているが,今後実施予定のさまざまな信頼性評価実験への利用を考慮すると規模はまだ十分とはいえず,今後も継続的にデータベースの拡充を図っていく必要がある.また,当初の計画では,データベースの整備遅延に備え,既存の研究用データベースを導入する予定であったが,データベースの選定作業に時間を要したため,現時点では導入に至っていない.以上の状況を踏まえて,生体情報を管理するためのストレージデバイスや認証アルゴリズムを開発・評価するためのPCについては,実験システムの拡充を図る翌年度以降に導入を見送った.一方,2.については,実際の利用場面を想定した生体情報のさまざまな入力環境を用意し,モダリティごとに認証精度やなりすましに対する耐性を評価した.この過程において,システム自身がその場に適した認証方式を適応的に選択するという新たなコンセプト(コンテキストアウェアネス)に基づく認証システムの着想を得,現在,このアイデアの具現化に向けて研究を展開している.さらに,当初,次年度に予定していたテンプレート保護技術の開発に関する検討では,計画を前倒しし,当該技術の確立に必要不可欠な携帯端末から取得可能な生体情報に基づく生体ビット列の生成手法を新たに提案し,その有効性を評価した. 以上の点から,データベースの整備と実験システムの構築についてはやや計画を下回ったものの,それ以外の検討項目については当初の計画をやや上回る実績が得られたことから,研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,前年度の検討結果を踏まえ,1.携帯端末での利用を前提とした生体認証アルゴリズムの開発と評価,2.携帯端末での利用に適したテンプレート保護技術の開発と評価の二点を主要な検討項目に設定する.このうち,1.については,アプリケーション実行時の使用リソースの低減,利用環境の変化に対する頑健性,マルチモーダル化の三条件を満足する生体認証アルゴリズムを開発する.一方,2.については,前年度に着手した携帯端末から取得可能な生体情報に基づく生体ビット列生成手法に関する検討を継続する.具体的には,携帯端末から取得可能な筆記情報と音声を対象として,より個人の特徴を反映した生体情報に起因するゆらぎの影響を吸収する生体ビット列の生成アルゴリズムを開発し,生体情報を保護するテンプレート保護技術に必要不可欠な基盤技術の確立を目指す.なお,両検討項目とも,当該年度に導入予定の認証アルゴリズム開発・評価用PC上,ならびに携帯端末上で提案手法の性能評価を行う. なお,前年度に課題として残されたデータベースの整備については,引き続き生体情報を収集して当該データベースの拡充を図るとともに,既存の研究用データベースの導入についても検討を継続する予定である. また,前年度と同様,当該年度の研究成果は,内外で開催される研究会およびシンポジウムにて発表する計画である.
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Causes of Carryover |
当初の計画では,本研究で必要となる携帯端末の利用環境を考慮した生体情報データベースを独自に整備する際に生じる遅延に備え,データベースの整備と並行して既存の研究用データベースを併せて導入する予定であったが,研究に適したデータベースの選定作業が難航したため,当該年度内の導入には至らなかった.また,これと関連して,生体情報を管理するためのストレージデバイスや研究開発・評価用PCの仕様が,当該データベースの規模や仕様に依存する部分があったため,これらの機材についても翌年度以降に導入を見送ることとなった.そのため,当初,これらのデータベース,ストレージデバイス,研究開発・評価用PCの導入に使用を予定していた経費が未使用となり,次年度使用額が生じる結果となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については,翌年度分として請求した助成金と合わせて,引き続き生体情報データベースの整備・拡充,およびストレージデバイスや研究開発・評価用PCといった実験システムの導入・拡充に使用する計画である.
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