2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00201
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和田 裕一 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (80312635)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マンガ / アイトラッキング / 視線行動 / 個人差 / 信頼性 / 性格特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、読み手の個性や言語能力がマンガの読み方に反映するという仮説に基づき、マンガを読む際の個人差の様態を眼球運動の振る舞いから明らかにすることにある。本年度は、マンガを読む際の視線行動の信頼性評価を主眼とした実験を行った。 マンガ読解時の視線行動を指標として個人特性の推定をするためには、そこで計測される眼球運動指標が測度としての信頼性を有していることが前提となる。たとえば、同一の読み手が時間間隔を空けて複数回同じマンガを読んだ場合でも結果に一貫性が認められることや(経時安定性)や、異なる内容のマンガを読んだ場合でも眼球運動指標の振る舞いが類似していることなどがその要件として挙げられる。 実験の結果、同じ作品を2回読む場合と、内容の異なる2作品を読む場合の双方において、注視時間やサッケード距離、注視回数等の振る舞いが類似していることが示され、指標間の相関の強さはテキストの読みにおける視線情報の信頼性と比肩する水準であった。また、吹き出し(セリフ)や人物の顔を関心領域に設定した場合や、1コマずつの視線行動を分析対象とした場合にも、各指標の経時安定性は十分に高いことが示された。マンガを読む際の視線行動は個人内で一貫しており、読み手の個人情報を推定する指標として一定の信頼性を有することが示唆された。また、イベントインデックスモデル(Zwaan, Magliano, Grasser, 1995)を適用した読み実験とアイトラッキング実験を実施し、マンガの読みにおける状況モデル更新に寄与する状況的次元を同定するとともに、状況モデル更新の有り様が読み手の読書経験に依存することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前の例数設計に基づくと100名以上の実験参加者が必要であったが、この値に近い数の実験参加者を確保することができ、マンガ読みの視線行動に関する眼球運動指標の基礎的なパラメータを同定することができた。これにより、文章読解研究における様々な知見との比較が可能となり、今後の研究展開の幅を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度にあたるため、これまでに得たデータの分析と論文化を中心に研究を進める。また、昨年度に実験に着手した「心の理論」を反映するマンガ読みの視線行動に関する実験に関してデータ収集を継続する。
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Causes of Carryover |
関連研究がいくつか新たに報告されたため、これらの知見に基づいて例数設計を見直したところ、当初の予定を上回るサンプル数を確保する必要が生じた。そこで、旅費の一部を実験参加者への謝金に充当する計画に変更した上で実験を行ってきたが、参加者の確保が思うようにいかず、結果的に当初の見込み額と執行額に幾分の差額が生じた。基本的な研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りの計画を進めていく。
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