2016 Fiscal Year Research-status Report
人工言語の共創課題を用いたことばへの気づきの獲得と言語学習効果の検証
Project/Area Number |
16K00205
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
金野 武司 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (50537058)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ことばへの気づき / 語用論 / 実験記号論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,これまでに成人を対象にして実施してきた人工言語の共創実験の結果をことばへの気づきの観点から再分析し,その気づきの程度と課題成績(意思疎通できる人工言語作成の成功度合い)との関連性を分析することを目標とした.本研究計画が開始される前年(平成27年)の10月に,中学生を対象として人工言語の共創課題を用いたワークショップの実施により得られたデータおよび知見を論文にまとめ,これを第6回知識共創フォーラム(平成28年3月開催)にて報告した.そこでの議論を元に,本研究計画の開始と共に論文の結果および考察を見直し,論文の改訂版を提出したところ,優秀論文賞を受賞することができた(平成28年3月に受賞).本論文では,萌芽的ながら,中学生においても実験課題を通じてことばへの興味や気づきを引き出し得ることが確認された.また,人の記号コミュニケーション時の認知活動を推定するための計算モデルの構築を進め,その最新の知見を第33回日本認知科学会(北海道大学にて9月に開催された)にて口頭発表した.さらに,共同研究者との実績として,人工言語の共創実験における行動分析のための計算モデルの発展と脳活動計測データの分析結果の各種学会での発表・報告を挙げることができる.これらの共同研究により得られた知見は,課題に取り組む参加者の認知活動をメカニズム的な観点から理解することを助け,本研究課題が目標とする「ことばへの気づき」の内実を明らかにすることに貢献するものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の報告としては,共同研究者との発表も含めて 7 件を実施することができている.また,研究の進捗としては,当初の計画通り,成人を対象にした実験課題中の参加者のつぶやきのデータ(12ペア24名ぶん)をテキストデータにし,ことばへの気づきについての言語報告と,課題成績との関連性を分析するための準備を整えた.また,ワークショップ形式で人工言語の共創課題に多人数が一斉に取り組むことができるようにするため,設備として,平成28年度には8台の iPad を導入することができた.同時に,端末を10台まで収納できるケースも2台購入した.これらを使って,多人数が同時に課題に取り組むことができるシステムの開発を進め,予備テストとして50名および100名の大学生を対象にしたシステムの動作確認を実施した(端末は学生のPCを使用).予備テストの結果,システムに不具合があることが判明したが,共同研究者である静岡大学の森田純哉氏と共に,不具合箇所の特定・修正を進めているため,この問題が致命的な研究の遅れにはならないと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
多人数で人工言語の共創課題を実施することのできるシステムの開発を進める.現在はまだ不具合がある状態のため,これを修正する.また,小・中学生が取り組むことのできる課題内容を探るため,課題の簡易化を実施する.大学生向けには静岡大学の森田純哉氏の協力により,100人規模での実験実施を予定する.小・中学生向けのワークショップについては,研究代表者が昨年度から所属を変更したことに伴い,近隣の小・中学校とのコネクションを構築する必要がある.平成29年度はこの点についての重点的な活動を予定する.
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Causes of Carryover |
発話をテキスト化したデータを分析するために計算機(Apple社製MacPro)の導入を計画していたが,まだ大規模な分析の実施には至らなかったこともあり,既存の計算機資源で充分に対応できたことから導入を見送ったことが大きく影響した.また,テープ起こしのために見込んでいた費用についても,別の予算で実施することができたため,その点についても予算を節減することができた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費については平成28年度に購入を見送った計算機を導入する.また,多人数での同時実施に使用する端末(iPad)を計画通り追加導入する.旅費について,本年度は主に国内会議への参加費を見込む.また,小学校で行なわれている外国語活動への取り組みを報告し合うために毎年開催される全国小学校英語活動実践研究会への参加費用を見込む.謝金について,本年度は実験参加者への謝金を見込む.その他として,プログラム開発のための資料やライセンスの購入・更新費用を予定している.また,実験に使用する各種消耗品の購入費用を見込む.
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Research Products
(11 results)