2016 Fiscal Year Research-status Report
注意と意図の重畳を進化的に考える -鳥類網膜の遠心性制御の機能的意義の解明-
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16K00209
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
内山 博之 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (70223576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 向網膜系 / 遠心性視覚系 / 網膜 / 空間的注意 / 選択的促通 / 行動選択 / 到達運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,脳から網膜への遠心性投射系である向網膜系の機能的意義を解明することを目的とする.多面的なアプローチを行っているが,初年度は主に,1)向網膜信号遮断の標的への到達運動への影響,2)向網膜系刺激によって活性化する網膜固有細胞,の2つのテーマで進展があった. 1)向網膜系の2次ニューロンであるIOニューロンをGABA-A受容体アゴニストであるムシモールの局所注入によって可逆的に不活性化することで向網膜系が網膜へ送る向網膜信号を遮断して,広域視野に呈示される標的刺激への到達運動を学習した動物のパフォーマンスへの影響を調べた.その結果,向網膜信号遮断によって前方視野での妨害刺激の誤選択率が上昇することを観察した.さらに,向網膜信号遮断によって側方視野に呈示された単独標的への到達運動の成功率が低下することを観察した.向網膜信号が標的検出力を向上させているとすると,以下のように解釈できる.向網膜信号遮断によって側方視野の標的に対する神経活動が到達運動の解発閾値に達せず,単独標的であっても到達運動が起こらない.向網膜信号遮断によって前方視野の標的に対する選択的促通が起こらないと,到達運動の対象としての標的の優位性が失われ,妨害刺激の誤選択率が上昇する. 2)向網膜信号の制御対象である網膜固有細胞を明らかにするために,遮光ゴーグルによって光遮断した動物のIOニューロンの電気刺激によって活性化する細胞を,最初期遺伝子の発現やCREB遺伝子のリン酸化を指標として調べた.IO標的細胞でリン酸化したCREB (pCREB)が観察された.また内顆粒層の中央層に細胞体を持つ細胞でもpCREBが観察された.別途行った免疫二重染色によってPKC陽性双極細胞(PKC-BC)がIO標的細胞の制御対象であることが示唆されているが,内顆粒層の中央層のpCREB陽性像は,PKC-BCである可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項で記載の通り,ほぼ当初の計画通りの進捗状況といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
1)到達運動への向網膜信号遮断の影響に関しては,動画像解析を加えてより詳細な分析を行う. 2)向網膜系電気刺激によるCREBのリン酸化が見られる細胞に対して,PKC免疫染色を行い,PKC陽性双極細胞が本当に向網膜系の制御対象であるかを明らかにする.
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Causes of Carryover |
消耗品の消費が想定よりも低く抑えることができたこと,計測実験用装置のためのPCやグラフィックボードが想定よりも低価格であったことなどで,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目は抗体など比較的高価な試薬等の消耗品を多く必要とするフェーズに入るため,丁度よい執行状況となると思われる.
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