2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00211
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
繁桝 博昭 高知工科大学, 情報学群, 准教授 (90447855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚橋 重仁 新潟大学, 自然科学系, 助教 (00547292)
朴 啓彰 高知工科大学, 地域連携機構, 客員教授 (60333514)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多感覚統合 / 視覚 / 前庭覚 / 自己受容感覚 / リーチング / 白質病変 / 映像酔い / 奥行きスケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3つのテーマ別に以下の研究成果を得た. 1. 身体の視覚フィードバックが空間知覚におよぼす影響について検討した結果,球のような抽象的な形状による手の位置のフィードバックはバーチャルな手と比べて空間知覚の変化の個人差が大きくなり,視覚フィードバックの特性によって空間知覚への影響が異なることを示した.また,この空間知覚の変化が奥行き方向への到達運動でのみ生じるかを検討した結果,運動方向によらず手の知覚位置および空間知覚が同程度に変化することを示した.さらに奥行き方向の運動ではドリフト量が小さく,かつ遠近法によるサイズの変化の影響もないことを示した. 2. ヘッドマウントディスプレイ(HMD)と回転椅子を用いて視覚情報と前庭覚情報を独立に操作し,両情報が矛盾する場合の酔いへの影響を検討した.バーチャルな空間の移動を自ら決定する能動条件と受動的に観察するのみの条件を設定し,さらに感覚矛盾の有無, 感覚矛盾がある場合の手がかり情報の有無の影響を検討した.実験の結果,能動条件において感覚矛盾の効果が大きく生じ, 能動的に自己の運動方向を決定する場合には感覚情報の強い予期が生じ, そのため矛盾の有無の効果が大きく, また受動条件よりも酔いの程度が大きくなることを示した.オプティックフローの操作が空間知覚に及ぼす影響についても検討し,歩行時の距離知覚が変化すること,提示視野によって自己運動知覚の強度が異なることを示した.回転椅子によって音源となる対象が視野から外れた場合の音源定位により前庭覚,視覚,聴覚の統合過程も検討した. 3. HMDと回転椅子による映像酔いの実験を白質病変の被験者と健常者の被験者で比較検討した.実験の結果,白質病変の被験者は健常者よりも有意に酔いの程度が大きくなることを示した.このことから,白質病変は多感覚情報の矛盾による影響がより強く生じることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度以降に予定していた,1. 拡張した自己身体によるリーチング運動の視覚的フィードバックによる空間知覚への影響,および 2. 前庭感覚と視覚の統合過程による空間定位の特性,酔いの計測は順調に実施できており,当初予定していた実験計画はほぼ全て実施し,かつ運動方向の効果,遠近法手がかりの効果,提示視野の効果など当初予定していなかった要因についても検討を行い,計画以上の進展があった.ただし,モーターでコントロールできる回転椅子についてはメーカーの開発・販売が遅れたこと,および自前での設計・作成ができなかったため,実験の実施には至らなかった.また,3. fMRIによる白質病変を有する被験者および健常者による脳領域間結合解析については,前年度に十分に検討できなかった行動実験の実施および解析を中心に行ったことにより,fMRIによる検討にまで至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
身体の視覚フィードバックの影響においては,運動出力への影響,遠心性コピー情報による空間知覚の安定性に及ぼす影響,脳活動へ及ぼす影響について検討する実験を実施する予定である.前庭覚と視覚の統合過程の検討においては,平成29年度に購入した資材を組み合わせて電動で制御する回転椅子を設計・作成し,感覚情報の統合および酔いにおよぼす影響について厳密な統制下で実験を実施する.HMDを用いた歩行時の視覚フィードバックの影響については,歩行する距離を延長し,より影響を詳細に検討できる環境を構築して引き続き検討する.また白質病変を有する被験者に対してfMRI実験を実施し,知覚情報処理課程における領域間結合の特性について検討をおこなう.
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度に出張及び納品は完了しているが,支出が確定しておらず当該年度には含めていない分があるため. (使用計画)該当分は次年度に適切に手続きを行う.
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