2018 Fiscal Year Research-status Report
強化学習モデルを用いた、潜在学習中の知識獲得プロセスの検討
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16K00214
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
薬師神 玲子 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (30302441)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 技能学習 / 強化学習 / 知覚マッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
潜在学習の一種である知覚-運動技能の獲得は学習過程の意識化(言語化)が難しく、この過程を研究するための強力なパラダイムは確立していないのが現状で ある。本研究は、強化学習エージェントを人間のパフォーマンスの量的基準(理想的観察者)として設定し、人間とエージェントの成績推移を比較することによって、この種の学習中に生じる知識蓄積過程の解明を行おうとするものである。今年度の研究では、昨年度で実施した実験によって得られた、課題についての知識が、不完全な、単純化された課題構造の表現と、課題遂行手順(ヒューリスティック)に分割されて意識化されるという結果をもとに、先に学習した人のアドバイスとして3種の知識(課題構造型・ヒューリスティック型・混合型)を与えた場合に、その後の学習にどのような影響を与えるかを調べた。その結果、ヒューリスティック型ではパフォーマンスの向上は早いが、途中で頭打ちになること、また、独自の知識の獲得が見られにくいことがわかった。課題構造型では、初期のパフォーマンス向上速度は遅いが、その後、ヒューリスティック型よりも高い成績に至る学習曲線が見られること、独自の課題構造の理解や、ヒューリスティック開発が見られることがわかった。混合型(課題構造・ヒューリスティックともに不完全な情報の混合)では、アドバイスを与えない条件よりも、かえってパフォーマンスが落ちる、つまり、パフォーマンスの妨害が生じた。前者の結果は、対応する知識を組み込んだ強化学習エージェントの動きに合致するものであったが、単純混合型のエージェントでは、学習は遅いものの、妨害まで生じるモデルは生じなかった。現時点で用いた強化学習エージェントでは、アドバイスを事前知識とし組み込むというものであったが、獲得知識と事前知識の間に干渉を想定するモデルではなかったことが結果の相違を生んでいるものと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に計画していた実験の遅れが響いているが、その後は、実験室実験のスケジュールとしては順調である。昨年度の実験では、本研究の主眼である顕在知識の意識化の質とタイミングが、先行知識によって異なることが特定できたが、これと比較する機会学習モデルの構築が未だ単純なものにとどまっており、研究目標の達成に至っていない。主たる原因は、研究申請後、所属学科カリキュラムの国家資格への対応について、責任ある役割を担うことになったことになったのに加えて、親族の介護が始まり、当初の予定よりも多くのエフォートが本課題にかけられなかったこと、当初見込んでいた研究協力者の雇用が相手方の事情により出来ず、その後同程度の技能を持った協力者の安定的な雇用が難しかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は、内容的には変更なく行う。具体的には、これまでの研究結果を踏まえた学習転移の実験を行い、また、これに合わせて、基本的な課題を用いたネットを用いた実験を遂行し、参加者の特性の影響についても検証する。そして、これまでの実験結果を総合して、知覚マッチング課題遂行時の知識蓄積過程のモデルを構築し、モデルと人のパフォーマンスを比較することによって、知識の顕在化のタイミングとその必要前提を明らかにする。現時点で用いた強化学習エージェントでは、アドバイスを事前知識としてあらかじめ組み込むというものであったが、獲得知識と事前知識との間に干渉を想定するモデルではなかった。このことが結果の相違を生んでいるものと推測される。今年度は、より精緻なモデルの構築と、特に干渉が見られる状況を用いて、健在知識の意識化されるタイミングについて探る予定である。人間と比較するエージエントの持つ知識としては、これまでは単純に知識更新を行うものを想定していたが、先行知識によってその後の知識が変化することを説明するため、先行知識と現在の知識との多層知識構造を持つモデルの導出を行う。そのための方策としては、必要に応じて当初より数理的基盤および情報科学の観点からの助言を依頼していたR Jacobs 研究室 (University of Rochester)及び CR Sims 研究室(Drexel University)にアドバイスを求めるとともに、これまでに引き続き機会学習の学会・研究会に参加して得た知識を活用する。
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Causes of Carryover |
主たる原因は、研究申請後、所属学科カリキュラムの国家資格への対応について、責任ある役割を担うことになったことになったのに加えて、親族の介護が始まり、当初の予定よりも多くのエフォートが本課題にかけられなかったこと、当初見込んでいた研究協力者の雇用が相手方の事情により出来ず、その後同程度の技能を持った協力者の安定的な雇用が難しかったことが挙げられる。 使用計画としては、モデル構築のためのディスカッションと研究発表のための出張費、これまでの成果の報告論文執筆時の英文校閲と掲載費、ウェブページ制作、並びに、より実際的な課題を構築するための入力装置の購入である。
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Research Products
(1 results)