2017 Fiscal Year Research-status Report
ウェアラブルスピーカアレーの実現に向けた聴感的指向特性生成技術
Project/Area Number |
16K00232
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
羽田 陽一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80647496)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スピーカアレイ / 円形アレイ / 直線アレイ / 音響信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,ヘッドホンやイヤホンのように耳を閉塞することなく、利用者のみに音を届ける身体に装着可能なウェアラブルスピーカの実現を目指し、耳元にのみ音を強く放射し、周囲への音漏れを気にならないレベルに抑える「聴感上の指向特性が良好なスピーカアレイ」の研究を行っている。 昨年度から引き続き,基本的なアレイ形状として,直線スピーカアレイと円形スピーカアレイに関する検討を行った。直線アレイにおいては,人の胸部前方に配置した2つの直線アレイを耳方向に向けたシステムについて検討を行い,頭部伝達関数を畳み込むことで,耳の高さに音を定位させつつ,指向性により周囲への音漏れを抑制できることを実験により確かめた。本成果については国際会議にて発表を行った。円形アレイにおいては,アレイ外側に音を放射する際の指向性再生を,2次元ではなく3次元的に制御する方式を引き続き検討した。特に本年度においては,円形アレイを縦型に積層することで円筒アレイを構成し,このフィルタ係数を安定的に求める手法を考案し,実機を試作することでその性能を確かめた。 さらに,円形アレイの内側に波面を再現しつつ,外側への放射を抑える方法を検討するため,外耳道入口を原点として半径4cmの円形スピーカアレイをヘッドホンとして装着するシステムの検討を行った。このシステムは,ドーナッツ状のヘッドホンであり,中心に穴が開いているため,耳を閉塞しない。今年度は,アレイの内側に波面を再現する方法を検討したが,定位が良好ではなかったため,アルゴリズムの改良が必要であることが分かった。また,周囲への音漏れについて考慮していないため,次年度の検討課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
音は空間上に3次元的に広がるため,これを制御することは一般には難しい。直線アレイの場合,軸対称としての制御しかできないが,例えば上方や下方に音を逃がすことで,周囲への音漏れを抑えつつ,両耳位置での伝達関数を制御することで定位と抑制の両立が行える可能性が分かった。円形アレイは基本的に2次元平面内に存在するため,今年度はこれを積層することで3次元に拡張する方法を提案し。3次元的に放射特性を制御可能なことを示すことができた。さらに,円形アレイの内部に音像定位の信号を再生し,外部には音漏れを抑制するというシステムの検討を合わせて始めた。こちらは現時点では結果は芳しくないが,引き続きアルゴリズムの改良を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,引き続き直線アレイと円形アレイにおいて耳を閉塞せずに音像定位を実現しつつ,周囲への音漏れを防ぐための制御技術について検討を行う。音像定位においては,外耳道入口付近の1点の制御ではなく,耳介周辺の音圧を指向性再生や,波の進行方向を再生するような方式を検討し,ロバストな制御を目指す。周囲への音漏れ防止については,音の歪みの少ない3次元的な指向性制御方式を重み付き最小2乗法と正則化パラメータの併用によって検討を進める。また,アクティブ騒音制御の分野で用いられている音場制御技術を限られた範囲内に導入した場合に,3次元空間としてどのような性能が得られるのかを明らかにする。 一方で,完全に音漏れを防止することは達成できないと考えられるため,漏れた音の情報が不快にならない,あるいは言語情報としては理解できない,といった状態にするためのマスキング方式についても検討する。本検討は,単にマスキング音を付加するだけではなく,再生信号側および再生フィルタの両面についても制御することを含んだ検討とする。これらの検討結果については、フィルタ生成アルゴリズムとともに、速やかに国内会議および国際会議等で発表をする予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた国際会議での渡航費用を他の寄付金等で賄えたため,一部支出を抑えたため。今年度は,プレゼンスのさらなる向上のため,国際会議の旅費回数増と,論文掲載費用として支出する予定である。
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