2016 Fiscal Year Research-status Report
視線計測に基づく随意運動の視覚運動変換メカニズムに関する研究
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16K00235
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
福村 直博 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90293753)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アイ・ハンド・コーディネーション / 線描画 / 視線計測 / 固視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトが線を正確になぞるような腕運動を行うためには,腕運動の制御と協調して視線位置を制御し,腕運動に必要な情報を得なければならない.この協調制御を調べるために,異なる個数の経由点を持つジャーク最小軌道を手本軌道として,なぞり運動時のペン先位置と視線位置を同時計測したデータを解析した.その結果,軌道が複雑になり,軌道の曲率変化が大きくなるにつれてFixationの回数は増加し,Saccadeの移動距離は減少するが,Saccadeの時間間隔には変化が見られなかった.また,2つの経由点を持つ,S字のような曲率変化が大きい軌道では,ペン先が手本軌道上の曲率が大きくなる部分を通過し終えたタイミングでSaccadeの発生頻度が高くなることが分かった.これは,描くことが難しい曲率の大きな部分を描き終わったことを確認した後にSaccadeによって視線位置を移動させているためと考えられる. また,なぞり運動(Tracing)と比較するために,先に軌跡を提示した後で線を描くときには軌跡の表示を消す線描画(Drawing)時の視線情報を計測した.このとき,運動開始前に目標軌跡を提示した時から運動終了まで視線を計測した.Saccadeする回数は,運動開始前はDrawingが多いのに対して,運動中はTracingの方が多かった.またFixationする位置を運動開始前と運動中で比較した結果,Drawing時には運動開始前と運動中でのFixationの位置にはかなり相関があったのに対し,Tracing時では,明確な関係が見られなかった.これは,Tracingは運動中のフィードバック制御が主になっているのに対し,Drawingの場合には運動開始前にペンが通過すべき位置を先に設定して先に運動指令を計算するフィードフォワード制御が主であり,その後は運動中に注視した点を通るように制御を行っていることを示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DrawingとTracing時の視線計測の計測環境を整え,実験を行ったところ,視線位置の変化の違いがあることが明白となった.今回の実験では描いた線を表示しない条件で計測を行ったため,Drawingの場合は主にフィードフォワード制御,Tracingの場合はペン位置の誤差をもとにしたフィードバック制御であることが明らかである実験条件であったが,それに応じて運動開始前および運動中の視線位置の変化に違いがあることがわかった.これにより,逆に視線位置の変化からその運動がフィードバック制御に依存しているか,あるいはフィードフォワード制御に依存しているかが判別できる可能性を示しており,研究目的における重要な知見を得たことになると考えられるため.
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の実験では,描いた線をリアルタイムにフィードバックしない条件で実験を行った.これは上述のように,それぞれのタスクがフィードバック,あるいはフィードフォワード制御のいずれかにより依存しやすくなる条件になっていたため,有意義な実験であった.しかし,実際のペンを用いた描画タスクとは異なっているため,より応答速度の速いタッチパネル,あるいはモーションキャプチャを用いて,描いた線をリアルタイムで表示する環境で実験を行い,結果を比較する.特にDrawingの環境では,完全にフィードフォワード制御に依存するという環境ではなくなるため,この時の運動中の視線情報をもとに,Fixationの位置を視覚フィードバック情報に基づくペンの予測位置とみなした,最適フィードバック制御とフィードフォワード制御が協調する制御スキームのシミュレーションを行い,線を描く運動における被験者ごとの制御戦略を推定する手法を検討する.また,同時にDrawing及びTracingの運動開始前の視線情報も解析し,事前の運動計画の精度も仮定したモデルの構築を検討する.
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Causes of Carryover |
計測実験を遂行する上で,運動解析用のソフトウェアや、より実験環境に合った計測キャリブレーション用の実験機材が先に必要であることがわかり,キャプチャシステムのカメラの台数を予定通り揃えることができなくなってしまったため,逆に残額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度の予算と合わせ,モーションキャプチャシステムのカメラを必要台数確保する.
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