2016 Fiscal Year Research-status Report
解剖学と情報学の連携で聴覚伝導路における音声情報のコーディングを解明する
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16K00237
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
瀧 公介 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20359772)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音響情報処理 / 下丘 / ビームフォーミング / 大脳皮質層構造 / 神経発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
この実験計画では分子生物学的技法を導入した解剖学的研究による精密な局所神経構造とシミュレーションによるモデル研究を結びつけ、情報学における新しい研究手法の確立をめざしており、中でも当初の計画では聴覚脳幹における解剖学的特徴の意義について情報学においてビームフォーミングとよばれる信号処理機構の使用によって聴覚情報の空間的分離を効率的に行っている可能性について着目していた。この計画においてはNeuroscience2016(7月)で発表などを行い解剖実験部分の報告及びモデル研究での協力者の確保に努めた。一方で申請書にも明記したように新教授の就任があり、当該年度はその実質的な1年目に当たったことから、研究・教育の両面において新体制の立ち上げに協力する必要があった。これは研究計画において記載した大脳皮質の神経発生的研究の導入および学生協力者の育成にもつながりうる。この方面においては遺伝子改変マウスを用いた大脳皮質形成過程を解析しうる実験系(層構造の乱れた大脳皮質を持つことで有名なReeler mouse及びそれと生物情報学的に関連する複数の自然発生及び遺伝子組換え条件下ノックアウトマウス)の再構築において貢献し、また鍍銀染色などの古典的手法を再評価することで局所神経構造の大域的特徴を評価比較しうる手法を確保するなどで研究に参加している。また神経解剖学の教育の改革を通して学生が研究活動に参加できる環境作りを行い、学内誌に学生主導での成果を発表するまでに至っている(生野泰彬,瀧公介ら;ヒト脳の中脳・橋断面における神経構造可視化のための簡便染色法,滋賀医大雑誌,30巻2017年)。大脳皮質の層構造は失われても生存を著しく阻害しないが、行動に非効率な変化が現れることから、学習の効率などを確保する上で関与している可能性が有り、ディープラーニングなどにおいて有用な知見をもたらしうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書にも明記したように新教授の就任があり、当該年度はその1年目に当たったことから新研究室の立ち上げのために積極的に協力する必要が生じて、研究・教育の両面において多大な影響が有り結果として当初の計画に分配できるエフォートが確保できなかった。特に理論部分の進展については研究協力者の国外留学もあってほとんど進まなかったが、学会活動によって複数の新しい協力者を見つけることができたのがわずかな光明である。またウイルスを用いた実験研究においても予定を大幅に下回り、予算S執行を来年度に持ち越すことになった。一方で大脳皮質をターゲットにした講座の新しい研究課題が大脳皮質構造の乱れによる情報処理能力の低下というテーマをもたらし、鍍銀染色法などの古典的手法も用いて遺伝子改変マウスにおける大脳皮質や海馬における神経構造の混乱の可視化に成功しているので、これらを材料とした展開が可能になっている。以上の状況を総合的にみて、部分的には計画以上に進んでいる点もあることから、やや遅れているの区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的であった解剖学的研究によってあきらかにされた神経構造の意義をモデル研究と情報学的解釈によって明らかにしてゆくという枠組みは守りつつ、実験部分については新たに研究環境の整った大脳皮質の層構造の発生と分子生物的制御のウェイトを当面増やしていくという選択肢がある。研究の進展具合によっては検討していきたい。一方で聴覚脳幹におけるビームフォーミング実現の可能性については、超音波研究からの継続性もあることから追究を続けていくことを考えている。
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Causes of Carryover |
申請書にも明記したように新教授の就任があり、当該年度はその1年目に当たったことから新研究室の立ち上げのために積極的に協力する必要が生じて、研究・教育の両面において多大な影響が有り結果として当初の計画に分配できるエフォートが確保できなかった。一方で大脳皮質の層構造の発生と分子生物的制御というテーマについては新たに研究環境が整ったことから当初の研究方針に合致した形で優先順位を変更し、実験研究を進めていくことができる環境にある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
変更した優先順位に従って実験部分を進めていくことで物品費を使用してゆくと共に、動物実験系の維持のために学生の参加を必要とすることから人件費等についても初年度で予定を下回った分についても消化できる予定である。
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Research Products
(3 results)