2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00256
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
片岡 章俊 龍谷大学, 理工学部, 教授 (20528682)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | マイクロホンアレー / エリア収音 / 雑音抑圧 / 音源分離 / 音源位置推定 / Wienerフィルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複数のマイクロホンアレー(以下、アレー)を用いて様々な音響条件において所望の音(音声)のみを高品質に収音する技術の確立である。複数のアレーを用い、目的音声を取り巻く音響環境(条件)に応じて、目的音声の抽出に必要な情報(例えば、雑音や目的音のスペクトルなど)を各アレーの設置位置の違いを利用して取得する。それらの情報を用いて目的音を抽出する方法を確立するとともに、各アレーにおいて取得すべき情報を得るために必要な収音アルゴリズムについても合わせて方法を確立する。 アレーを用いれば、周囲の雑音を抑圧しながら目的音声を高品質に収音することができる。しかし、アレーは指向性を制御するため、アレーに対して目的音と雑音源の成す角度が小さい(同方向に近い)時には効果がない。本研究では、複数のアレーを用いることで、それぞれのアレーが異なる音響環境条件の信号を取得するため、多様な処理が可能となる。 本年度では、目的音源と雑音源に対して設置位置が異なる各アレーから得られる出力信号を統合処理して目的音声を高品質に抽出する方法を検討した。使用環境の音響条件を把握するため、目的信号の到来方向は既知とし、雑音源の位置を複数のアレーを用い推定する方法を提案した。これは音源間の相関関係に着目した手法であり。個々の音源が互いに独立であれば、個々の音源は無相関となる性質を利用して音源位置を推定することができる。 音源の位置情報を用いて音響モデルを推定し、Wiener ポストフィルタを設計することで特定領域内の音源を強調する手法を提案した。音源の位置に2つのアレーでビームフォーマを行い、その出力を加算することにより音源を強調する。この出力と加算したビームフォーマのビームパターンから、目的音源の音響モデルを推定することにより、より正確な音響モデルを推定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、目的音源と雑音源に対して設置位置が異なる各アレーから得られる出力信号を統合処理して目的音声を高品質に抽出する方法を検討した。各アレーに用いる収音アルゴリズムは、まず既存の手法(遅延和法や最小分散法など)を用いた。 使用環境の音響条件を把握するため、目的信号の到来方向は既知とし、雑音源の位置を2つのアレーを用い推定する方法を検討した。異なる2つのアレーで方向推定を行うと、推定方向の直線上に交点ができる。これが音源の位置となる。しかし、音源が2つ以上あるとき、交点が音源数より多く複数存在する。つまり、音源ではない交点が存在する。そこで、複数ある交点から、真の音源位置を推定する手法を提案した。本手法は音源間の相関関係に着目した手法であり。個々の音源が互いに独立であれば、個々の音源は無相関となる性質を利用して音源位置を推定することができる。 次に、音源の位置情報を用いて音響モデルを推定し、Wiener ポストフィルタを設計することで特定領域内の音源を抽出する手法を提案した。音源の位置に2つのアレーでビームフォーマを行い、その出力を加算することにより音源を強調する。この出力と加算したビームフォーマのビームパターンから、目的音源の音響モデルを推定することにより、より正確な音響モデルを推定することができる。推定した音響モデルを用いてWienerフィルタを設計し、それぞれのアレーは遅延和法で収音した信号にWienerフィルタを適用することで目的信号の抽出ができる。実環境での実験の結果、音声品質を従来法と同程度に保ちながら、雑音抑圧量を約7.7[dB] 向上させることができた。 今後は、音源位置情報を逐次的に推定しながら、雑音を抑圧するための手法や、2つのマイクロホンアレーと目的音源の距離が異なる位置であっても、十分な雑音抑圧が可能な手法について検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、いろいろな音響条件下で、各アレーにおいて取得できる情報の検討を行い、その情報の取得に適した収音アルゴリズムについて検討する。各アレー信号を分析することにより、雑音源の数やそれぞれの位置など様々な音響条件を把握することができる。アレーの設置位置の違いによって得られる異なる情報として、1)目的信号成分を多く含んだ処理信号とそのスペクトル、2)雑音信号成分を多く含んだ処理信号とそのスペクトル、3)雑音源の方向ないしは位置や雑音源数などが考えられる。 次に、状況に応じた処理方法を検討する。アレーの位置によっては目的信号成分が多く得られる場合や、逆に雑音成分のみが多く得られる場合などがある。これらの状況に応じて収音アルゴリズムも適切に選択することが望ましい。目的信号成分が多く得られるアレー位置であれば、より目的信号成分が得られるような収音アルゴリズムを選択することが望ましい。あるいは、あえて目的音声にひずみを生じさせない評価尺度で目的音声成分を取得する。この場合、雑音成分も多く残ってしまうが、他のアレーから得られるより正確な雑音成分の情報を用いて処理することよって、目的信号に歪が少なく高品質な収音が可能となる。このように音響条件に応じて各アレーに役割を分担されることにより、目的音声を高品質に抽出する。そのため、音響条件の違いに応じた取得すべき情報の把握と、その際に用いるべき収音アルゴリズムについて検討する予定である。 さらに、役割に応じて各アレーから得られる情報に基づき、目的信号を高品質に抽出する方法の最適化を図る。異なる音響条件にある各アレーから得られる情報に基づき、再度、各アレー処理信号から目的信号の抽出方法について検討して方法の最適化を図る予定である。
|
Causes of Carryover |
研究は計画通り進捗しているが、検討を進める上で購入を計画していたコンピュータおよびAD変換機などの機材を、これまでの検討過程では既存のものを用いていたため当初購入予定時期より遅れている。また、マイクロホンは感度の不揃いを想定していたが、これまでのところ想定よりもバラツキが少ないため購入が少なく済んでいる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、マイクロホンの数を増やし規模を大きくして検討を行う予定であるため、コンピュータや多チャンネルのAD変換機の購入などを行う予定である。また、処理音声の品質を評価するため、一般人による評価試験を実施する際、人数や回数を増やす予定である。さらに、本研究成果を広く公開するため、音声・音響研究者が多く参加する日本音響学会全国大会での発表を促進する予定であり、これらの研究の一層の促進に費用を用いる予定である。
|