2017 Fiscal Year Research-status Report
生体組織画像における高精度な細胞領域セグメンテーション手法の開発
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16K00261
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
木森 義隆 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター), 新分野創成センター, 特任助教 (10585277)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | mathematical morphology / セグメンテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,定量化を志向した生命科学研究の技術基盤の構築を目的として,細胞領域の高精度自動セグメンテーション手法の開発を行うものである.生物医学画像の性質を十分に考慮し,その対応に特化した独自の画像処理手法を用い,病理診断にも適用可能な精度を持つ自動セグメンテーション手法を開発する.解析対象は,各種顕微鏡で撮影された生体組織中の細胞等とし,その領域の内外を分かつ輪郭部位の高精度な自動抽出手法の開発を実施する. 昨年度までで,(1)細胞輪郭領域の初期セグメンテーション手法の開発,(2)ノイズやアーチファクトの除去手法の開発を実施した.ここでは,mathematical morphologyに基づく輪郭特徴の抽出を行った後,その画像を自動閾値法により2値化し,輪郭領域とノイズとの区分を行った.しかし,輪郭領域のなかにはきわめて輝度の低い部分があるため,2値化によりその領域の抽出が行われず,輪郭が途中で途切れるという問題があった.この“途切れ”が広範囲にわたると複数の細胞が融合して個々の細胞としてのセグメンテーションが不可能になっていた. さらに,輪郭以外の構造物の影響によって,抽出する輪郭形状の精度が低下するということも問題となった.そこで,当該年度は,これらの問題点を改善するため,(3)不連続な輪郭の連結手法の開発,および(4)輪郭に近接した構造体の除去手法の開発に取り組んだ. 輪郭領域の画像空間的特性を利用した画像処理技術を考案することにより,細胞の輪郭領域とそれ以外の領域に区分して,輪郭領域のみを選択することが可能になった.輪郭内の輝度値に関わらず,その領域内にある構造を抽出することが可能になったため,不連続な部分は大幅に減少し,かつ,ノイズ等の不要な構造も除去できるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究において,細胞の境界領域のセグメンテーション精度に関する問題が生じていた.当該年度は,細胞の輪郭領域の抽出手法を改良して,より高精度な細胞輪郭抽出技術の開発に取り組んだ. 本開発手法の基礎としたのが,rotational morphological processing (RMP)を用いた,connected filterである.これは,濃淡画像(原画像)に対し,その輝度レベルにおいて空間的に連結した領域ごとに分割したconnected componentを生成し,その属性によって,原画像中の領域選択を実施するものである.本研究では,細胞の輪郭領域とそれ以外の領域に区分して,輪郭領域のみの選択を行った.これによって,輪郭内の輝度値に関わらず,その領域内にある構造の抽出ができるため,不連続な部分は大幅に減少でき,かつ,ノイズ等の不要な構造も除去できるようになった. しかし,それでも画像によっては,輪郭の途切れが生じる場合もあった.そこで,それを閉合することを可能にするRMPに基づく新しいregion growing法も開発した.これにより,これまでの結果に比べ,より高精度な輪郭形状の抽出が可能になった. 本手法の性能を評価するため,エキスパートの目視による細胞認識結果との比較実験を実施した.用いた画像は,マウスの心筋組織の蛍光顕微鏡画像である.空間分解能0.65μm/pixelの画像(512 x 512 pixels)10枚のデータセットの中から,目視によって認識された細胞は375個であり,そのうち,本手法は,369個の細胞を正しく認識できた.したがって本手法による細胞セグメンテーションの正答率は98%であり,高い自動認識結果を示した. このことから,現在までの研究の進捗状況は概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度における開発手法について,その性能評価を行った結果,目視の結果と比較して98%の正答率となった.細胞の輪郭形状の抽出精度が向上したため,これまでの結果よりも正答率が高くなった.誤認識の原因としては,組織の歪みや厚みによって,細胞の輪郭形状が不明瞭となった場合,また,細胞質の領域に別の層の細胞輪郭が重なって領域が複数に分割されてしまった場合などが挙げられる.しかし,このような場合は,目視でも細胞領域の判断が困難なため,解析の対象から除外するほうが妥当であると考えられる. これまでの研究では,マウスの心筋細胞の画像データを対象にしてセグメンテーション手法を開発してきたが,本対象においては,当該年度でその開発はほぼ終了した.今後は医療応用に向けた細胞の形態解析をめざし,本手法を心筋細胞の画像以外の幅広い生物医学画像データに適用していく.その過程において,より頑健かつ汎用性をもったセグメンテーション手法に改良していく.
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Causes of Carryover |
プログラム作成補助に係る謝金を計上していたが,今年度は比較的小規模の画像データを対象とし,かつアルゴリズムの実装を中心としたため,プログラム作成は研究代表者自身で行った.また,論文作成が完了しなかったため投稿準備に係る予算が未使用となった.さらに,学会参加のための旅費が不要であったこともあり未使用額が生じた. 次年度の使用計画としては,画像処理プログラム作成費用,現在作成中の論文投稿料等,また,学会参加に係る旅費等の支出を予定している.
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