2016 Fiscal Year Research-status Report
視覚刺激呈示タイミングの制御による脳波を用いた文字入力の高速化
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16K00263
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
深見 忠典 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (70333987)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | BCI / 脳波 / 文字入力 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳波を用い,考えるだけでコンピュータ入力可能なbrain-computer interface (BCI)の研究において,ディスプレイ上に呈示された多数の候補文字から被験者の意図する1文字(標的文字)を選択する技術は,入力対象を特定するという観点から,様々な用途に利用可能なBCIの基盤技術の一つである.本研究では,候補文字の呈示を工夫することで,同時に異なる二種類であるP300とSSVEPの脳波を発生させ,それらを効率良く分離する独自の技術により標的文字の特定を短時間で行い,文字入力の高速化を試みる. 本年度の実施計画では,①多数例の被験者からデータを取得する,②刺激呈示パラメータとP300およびSSVEP出現の関係について検討する,③刺激呈示に用いるディスプレイ上での被検者の注視点を取得し,出現するP300成分との関連性について調査するの3点について研究を実施する予定であった.①については,10例程度の被検者よりデータを収集することができたが,年齢や性別に偏りがあるため,今後この点を考慮してデータ収集を行う.②については,SSVEPの点滅刺激において,基本波成分よりも10Hz以下の低い刺激周波数が生成する20~40Hzの高調波成分において,高い安静時比の脳波成分が得られた.また,我々の提案するP300とSSVEPの分離手法による分離精度を経験的モード分解法を用いて向上させることができた.③は,アイトラッキング装置を導入し,脳波計測と同時に視点計測を行うシステムを完成させた. これらの研究により,来年度の研究実施に向けた,計測装置,計測条件といった基盤が整備された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の提案手法では,SSVEPを発生させるためのチェッカーボード上にP300を出現させるための文字を配置し,文字の呈示タイミングを制御した2回の刺激により,SSVEPとP300の2成分を含む2応答を得る.次に,これらの応答を加算および減算することで,SSVEPおよびP300を相殺し,P300とSSVEPを分離する.しかし,これは,SSVEPとP300の出現が時間により変化しないという仮定に基づいているため,現実の時間による波形の変動に対応できない.よって,我々は,波形の相殺がうまくいかないケースに対処するため,経験的モード分解法を用いて,分解により得られた信号成分をもとに加減処理することで,良好な2成分の分離波形を得た. 視点情報との同時計測については,アイトラッキングのためのハードウェアを購入したが,ソフトウェアについてはSDKを用いて独自に作成した.ソフトウェアの作成に時間を要し,実験開始が遅れたが,その後,研究に従事する人員を増やすことにより,年度末時点で,研究実施計画に示した本年度の研究をほぼ予定通り遂行することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降の研究において,標的文字入力の高速化と並行して最良の標的文字判定方法について研究を進めたい.提案手法は,標的文字の推定精度向上のために機械学習を用いる手法と異なり,学習データの事前計測を必要としない.これは,即時のBCI利用において大きなメリットになると考えられが,反面機械学習の不使用は,標的文字の判定時において事前知識を持たないということを意味しており,誤った標的文字の推定により入力文字数の低下を招く可能性がある.そのため,本研究では,一般的な文字呈示方法(P300スペラ等)と異なり,各文字の点灯タイミングを工夫することで,標的文字の推定を容易にするだけでなく,SSVEPの周波数も併用して評価することで,機械学習不使用による入力文字数低下を防止したい. また,引き続きデータの収集および解析を行い,統計的な観点から本研究における手法の有効性について評価を行いたい.
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Causes of Carryover |
予定では,アイトラッキング装置をハードウェアとソフトウェアをセットで購入し,すぐに研究に取りかかる予定であったが,実際に配分された研究費が購入予定額に満たず,ソフトウェアの購入を断念した.使用額が予定額に達しなかったのは,ソフトウェアの購入を断念したことに加え,それにより研究開始が遅れ,国内学会への参加も見送ったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定であったソフトウェアは,装置を動作させるための制御用プログラムとデータ解析プログラムである.前者については,装置メーカーより提供されたSDKを用いて,独自にプログラムを作成し,研究開始において遅れを生じたものの,装置を動作させることに成功した.しかし,後者のデータ解析に必要なソフトウェアについては,保有しておらず,次年度において購入する予定である.また,次年度は今年度以上に研究成果を出し,国際学術雑誌への投稿や学会への参加のために使用したい.
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