2016 Fiscal Year Research-status Report
視覚障がい者と健常者のための共遊クラフトアート支援環境の実現
Project/Area Number |
16K00269
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
金井 秀明 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90282920)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | クラフトアート支援 / Assistive Technology / 視覚障がい / ダイバーシティ / インクルーシブ教育 / インクルーシブデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,インクルーシブ教育の特徴である「同じ場所で共に学ぶ」支援の一つとして,障がい者と健常者が共に遊び,共同でモノ作りを行う「共遊クラフトアート支援システム」の開発を行う.研究では,視覚障がい児と健常児を対象とし,クラフトアートの1つである切り絵を取り上げる.支援システムには,視覚障がい者と健常者のコミュニケーションを支援する機能(共遊促進機能)及び切り絵作成を支援する機能が必要である.本研究では次の課題に取り組む.(1) 視覚障がい者用クラフトアート支援システムの開発,(2)共遊促進 機能の開発,および(3)共遊クラフトアート支援システムの開発. 平成28年度は,以下の「視覚障がい者用クラフトアート支援システムの開発」を進めた.適宜, 評価実験を行い,提示手法の有効性の検証を進めた.視覚障がい者用クラフトアート支援システムとして,「切り絵操作把握支援機能」と「切り絵作成支援機能」について開発を進めた.両支援機能において,視覚障がい者にどのような方法て情報提示を行うかが重要となる.本研究では,視覚障がい者用システムでは, 聴覚(音声)や触覚による情報提示方法を用いる.これらの聴覚・触覚への情報提示方法については,音による気づき支援,振動による気づき支援や入力装置の操作性制御による気づき支援の開発を進めた. 「切り絵操作把握支援機能」としては,例えば,スタイラスの操作性を変化させることによる「なぞり感覚の変化」によって,スタイラスで絵柄とそうでないところをなぞったことを把握支援する.「切り絵作成支援機能」としては,健常者用システムの切り絵作成支援 で有効であった「適切筆圧提示機能(適切な筆圧でのみ筆跡を表示する)」の開発を進めた.本年は開発初期段階として,健常者にゴーグルを装着させ初期評価実験を行いながら開発を進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,視覚障がい者用クラフトアート支援システムの開発を,適宜評価実験,有効性の検証を行いながら進めた.開発要素としては,「切り絵操作把握支援機能」と「切り絵作成支援機能」である.ユーザ参加型デザインとして,視覚障がい児を対象とした機能策定を研究協力先の協力を得て,行うことができた.一方,視覚障がい児を対象とした評価実験に関しては実験計画の策定を十分に行う必要があると判断し,健常者にゴーグルを装着させ初期評価実験結果の検証を十分行った上で実施することとした.そのため,視覚障がい児を対象とした評価実験については,次年度に実施することっとなった.この点では進捗が研究計画に比べ若干遅れた.次年度以降の評価実験にも関わることであるため,より精度の高い実験計画を行うことを優先したため,結果的にはこの時点での詳細な実験計画策定は,次年度以降において研究推進には優位に働くと判断した. 本年度の研究成果については,国内発表(2本),海外発表(査読あり3本,うち1本については次年度発表(平成29年5月))であった. 以上のことから,おおむね順調に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,「共遊促進機能の開発」に注力する.その際,研究協力者や評価実験実施場所と密に連携し,インクルーシブデザインに代表されるユーザ参加型デザインとして,機能策定・システム開発を行う.具体的には,以下のような研究を行っていく予定である. 本研究での「共遊」とは,視覚障がい者と健常者が相手の切り絵操作やその結果を把握し,共同で切り絵を作成することとした.視覚障がい者と健常者が各々のシステムを利用して,共遊促進機能を利用しながら,切り絵を作成する.共遊促進機能として,「共遊相手の切り絵操作やその結果の把握機能」と「共遊相手システムへの操作付加機能」を開発し,視覚障がい者用システムと健常者用システム間の同期型CSCWとして実現する.これらの機能は,健常者用システムでのスタイラス操作と平成28年度に開発を進めた「切り絵操作把握支援機能」との同期機能として実現する.両システムの切り絵作成状況に応じて,視覚障がい者用システムでは「なぞり感覚の変化」に反映され,また,健常者用システムでは絵柄の該当箇所の色変化や文字情報付加として反映される. 共遊促進の機能を検討するために,共同作業時に視覚障がい者と健常者のコミュニケーションの方法・内容等に ついて調べる.実験では,(a)擬似視覚障がいゴーグルを着用し健常者(擬似視覚障がい者)と健常者,(b)視覚 障がい者と健常者のパターンで支援システムを利用し,アンケート調査,インタラクションログ分析により,そ の間のコミュニケーション方法・内容等を調査する.
|
Causes of Carryover |
当初予定していた「人件費・謝金」による実験経費が,約2時間分少なく済んだため.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度において,「人件費・謝金」による実験を行うため,その中で利活用する.
|